トラキライトの長所・短所 ~個人的見解~

● 喉頭鏡に比べて・・・
 喉頭鏡を使って気管挿管を行う場合には、「喉頭鏡」という金属製の、ある程度の大きさのもの(決して小さくはない!)を、口腔~咽頭という狭い場所に入れて喉頭展開し、さらに気管チューブと、声門が見えるための視野を確保しなくてはならない。そのためには、Sniffing Position という通常はしない変な格好をさせ、大きく開口させ、かなり強い力で舌~舌根部を強く圧排しなくてはならない。その結果として、しばしば喉頭鏡によって、歯牙、口唇、口腔内粘膜を傷つけることがあるし、また交感神経および副交感神経を強く刺激することにもなる。当然、頚椎にもへんな力が加わることになる。

 これに比べてトラキライトによる挿管は、口腔内に入れるのは、トラキライトのワンドを挿入した気管チューブのみであるから、大きく開口する必要もなければ、舌~舌根部を強く圧迫する必要もない。そもそもトラキライトだけでは患者に大きな力を及ぼしようがないのである。したがって、歯牙や口唇,口腔内粘膜を傷つけることが喉頭鏡を使った場合に比べて圧倒的に少ないと予想される。また、気管内にチューブを挿入する段階での自律神経系への影響は同じだとしても、喉頭展開を行わなくて済むというのは、低侵襲であると言ってよいと思う。

 喉頭鏡を使った気管挿管というのは、声門を直視することを前提としているが、そもそも神様は人間の喉頭の構造(解剖)を口から覗いて声門が見えるようには作ってくれてないので、どうしたって無理がある、見えない人だって当然何パーセントかは存在するんだと思う。この点、トラキライトは、無理なものは最初から諦めている、というのか、発想の転換、というのか、正常な口腔~咽頭~喉頭の構造をうまく利用しているデバイスと言えると思う。

 人体の正常解剖としては、上顎門歯と咽頭の口部(中咽頭)を結ぶ直線(=口腔軸)と声門の中心を通る直線(=喉頭軸)との交叉角度が、ほぼ90度になるので、この事実をうまく利用して、ワンドをホッケースティック状に90度に曲げるわけだ。そう考えると、Sniffing Position にすると、この正常な90度を成す角度がより直線(180度)に近くなるので、喉頭鏡による気管挿管ではない、トラキライトによる挿管の場合には、むしろ Sniffing Position にしない方がよいのだろうと思う。ということは、頚椎に負担になるようなポジションは取らないほうがよいということになり、さらに低侵襲であるというメリットが生まれてくる。

■ 長所=低侵襲(歯牙、口唇、口腔粘膜、頚椎、自律神経→心)

● 短所をあげるとすれば・・
・口腔内・咽頭・喉頭などの病原があっても、それを知らないままになる。
・ブラインドなので、なかなか入らないときは、喉頭をあちこち突っつくことになる。
 でも喉頭展開に比べれば・・・絶対、侵襲が少ないと思う。
・デバイスがデリケートで、前もってちょっとした準備が必要。
・抜管時にはやはり喉頭鏡を使用するので、洗い物が増える。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

ナイス

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

  • 梨状窩局在化補助盲目的挿管:喉頭鏡挿管との比較

    Excerpt: ・従来の気管挿管では、声門を直接見るために喉頭鏡検査が必要である。しかしながら、喉頭鏡検査は多くの潜在的な合併症と関連している。本研究の目的は、従来の喉頭鏡下気管挿管の場合と梨状窩局在化補助盲目的経口.. Weblog: 麻酔科勤務医のお勉強日記 racked: 2019-04-08 07:07