トラキライト挿管が楽しい!

 喉頭鏡で挿管していた頃に比べて、「挿管が楽しみ!」と思うのは僕だけだろうか? 喉頭鏡を使った挿管では、いつも喉頭展開するまで「見えるかな・・・どうかな・・・?」という一抹の不安さえあったように思うのだが、今は「トラキがだめなら喉頭鏡があるさ。」という心の余裕があるような気がする。それから、喉頭鏡で挿管する場合、喉頭展開の難しい症例では、マジで左手がかなり疲れることがあった。が、今のところトラキライト挿管で「あ~、疲れた!」と思ったことはない。やはり動員する腕力の大きさがぜんぜん違うようだ。

 喉頭展開して直視下挿管するよりも少ない力で、かつ短時間でスムーズにトラキライト挿管できたときの快感はけっこう病み付きになりそうである。外科のドクターが、従来バッサリ切っていた腹を、腹腔鏡を使って小さな傷で、かつ短時間で手術できたら、快く思うのと同じじゃないのかな。

 学会で「私は、もう2000例くらいのトラキライト挿管の経験があります。」というプレゼンターの言葉を最初に聞いた時は、「何をバカな、なんでそこまでトラキライトにこだわらないといけないんだ!?」と疑問に思って半ばバカにしていたのだが、40数例にしてすっかりトラキライトの虜になってしまった気がする。

 世の中、トレンドはVisualization(視覚化)だ。いままで盲目的にやっていたブロックや内頚静脈穿刺もエコーを使ったり、腕神経叢ブロックをイメージ下で行ったり、経食道心エコーで術中の心臓の状態を視覚化するのも同様だ。それに対して、トラキライトは、このトレンドに逆行しているかのようでもあり、へそ曲がりの僕にとっては、そんな点もまた魅力的だ。

 四肢の関節を筋弛緩の効いた状態で、過伸展すればどうなるだろうか? 先日、全身麻酔下の患者さんの左上肢が手台に縛り付けられたまま、手台とともに落ちかけたことがあった。術後回診に行ったときに、「何でか左腕が痛くてな~。」と訴えられた。左上肢の過伸展による筋肉や腱の微小な断裂が起こったせいで痛みが出たに違いない。

 喉頭鏡で喉頭を展開するときにも、同じようなことが起きていることは想像に難くない。いつもは開けないくらいの大口を他動的に開けさせられて、金属のヘラで舌根部をしこたま押さえつけられ、果ては、甲状軟骨を強い力で圧迫されて、あとで痛みが残らないほうがおかしいくらいのことをしていたんじゃないのか・・・、と最近思う。術後回診に行って、喉の不快感を尋ねても、以前よりも「何ともないですよ。」という答えが返ってくることが多い。


 施行する側が楽しくて、される側の侵襲が少なければ、これに勝るものはないんじゃないのかな。とりあえずの目標は100例だけど、最近、「喉頭鏡のような野蛮な道具は使いたくない!」という気さえするので、きっとトラキライト挿管は、今後、僕にとっては、ファーストチョイスになるに違いないと思っている。今のところ、きちんと喉頭鏡で展開した方が無難かなと思うのは、意識障害があって、咽喉頭に痰や異物などが存在する可能性のある症例と、頚部膿瘍などで喉頭の解剖学的構造が正常から逸脱している可能性のある症例、それと耳鼻科のドクターから直視下挿管を促されたとき・・・くらいかな。

(4年くらい前、トラキライトのトレーニング中に書いた文章です。)

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