薬剤添付文書に見る怖い麻酔

「アナペイン注」の添付文書に以下のような記載があるのをご存知だろうか?

【臨床成績】
1. 硬膜外麻酔
7.5mg/mL製剤及び10mg/mL製剤(投与量:20mL、穿刺部位:L3-4、対象:下腹部及び下肢手術)を用いた臨床試験12),13)において、本剤の単回投与で手術が可能であった症例の割合は、それぞれ83.9%(52/62例)、90.9%(30/33例)であった。
ブピバカイン塩酸塩5mg/mL製剤と比較した本剤7.5mg/mL製剤及び10mg/mL製剤のPinprick法による痛覚遮断域及びBromage Scaleによる運動神経遮断の程度の推移を図3及び図4に示した。
主な副作用として、交感神経遮断に起因する血圧低下が7.5mg/mL製剤及び10mg/mL製剤それぞれに28.7%(31/108例)、16.4%(9/55例)、徐脈が5.6%(6/108例)、9.1%(5/55例)、嘔気が4.6%(5/108例)、3.6%(2/55例)、嘔吐が1.9%(2/108例)、1.8%(1/55例)に認められた。なお、7.5mg/mL製剤において、高位の運動神経遮断に起因するSpO2低下4.6%(5/108例)及び呼吸困難2.8%(3/108例)も認められた1),2),12),13),14)。

1) 大澤正巳他:臨床医薬, 15(7), 1101, 1999
2) 大澤正巳他:臨床医薬, 15(7), 1175, 1999
12) 大澤正巳他:臨床医薬, 15(7), 1205, 1999
13) 大澤正巳他:臨床医薬, 15(7), 1273, 1999
14) 藤森貢他:臨床医薬, 15(7), 1155, 1999

下腹部及び下肢手術を対象として、L3-4で穿刺して、なんと20mLもの大量投与を行なっている。しかも濃度が7.5mg/mLと10mg/mL製剤である。本当にこのような殺人的麻酔を行なって臨床成績を収集したのであろうか? またその時の副作用としての血圧低下が、それぞれに28.7%(31/108例)、16.4%(9/55例)とは、少なすぎると思わないだろうか。私の使用経験からすれば、ほとんど全例で血圧低下が起こると思うのだが・・・・。

私は通常、濃くても0.7%程度のアナペインを最大6ml、通常は5mlしか使わないのだが、それでもしばしば血圧低下が生じる。10年ほど前に、腹部手術であったが、麻酔科の若い医師が「硬麻をしっかり効かせてやろうと思って・・」、1%アナペインを気前よく10ml硬膜外に投与したことがあったが、後を引き継いだ私はちょっと大変な目に合ったことを覚えている。その後、2時間くらいの間、エフェドリン1Aとネオシネジン2Aを使って低血圧と戦わなくてはならなかった。もちろんその時は腰部ではなく胸部硬麻であったが。

「上記の記載を鵜呑みにして、そのまま臨床に適用するととんでもないことになるのではないか!?」と心配するのは私だけだろうか。
全身麻酔併用ではないから、20mlもの大量投与が必要なのだろうか?
全身麻酔併用ではないから血圧があまり低下しないのだろうか?

「これはあくまでも治験段階での使用例であり、けっして同様の投与はしないでください。」というくらいの注意書きが必要ではないだろうか。

「適宜増減して使用するように」と注意書きがしてあるから薬品メーカーは責任逃れができるのだろうが、あまりにも無責任な記載であると思う。使用責任は、あくまで医師にあり、メーカーとしてはたくさん薬液が使われれば(たくさん売れれば)それでよいのだろう。悲しい現実だ。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

驚いた

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック