局所麻酔の秘訣

私たち麻酔科医が(皮下浸潤)局所麻酔を行うのは、脊椎麻酔や硬膜外麻酔を行う前、循環動態が不安定な患者さんで麻酔導入前に動脈ラインを確保する場合など、かなり限られている。
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ここでは、脊椎麻酔や硬膜外麻酔を行う前の局所麻酔について私が心がけている点について記す。

せっかく看護師が良い穿刺体位を取ってくれていても、最初の局所麻酔で患者さんを痛がらせて体位が崩れてしまっては、看護師の努力が水の泡である。局所麻酔で痛がらせることがないようにしよう。

(1)細い針を使用する

使用する針は、細い方が確実に痛みは少ない、自分で針を刺してみるのもよい経験かもしれない。脊椎麻酔や硬膜外麻酔の前の局所麻酔用の針としては、通常は23Gを使用しているが、比較的若い患者さんでは痛みの感受性が高く、穿刺時に腰が引けて体位が崩れてしまうことが多いので、25Gかできれば27Gを使用して局所麻酔を行う。針の長さが足りないと思う場合は、まず細い針で表面を麻酔してから、長い針に変えることで対処可能である。

(2)痛みのプレコンディショニング

いきなり鋭い痛みがあると反射性にその痛みから逃れるための逃避運動がおこる。これに対して、じんわりと痛みが強くなっていく場合には、逃避運動が起こらない。そこで、じんわりつねったり、爪で穿刺部位を強く圧迫したりして、あらかじめしっかり痛み刺激を与えて局所の痛覚感受性を落としておくことで穿刺痛が和らぐ。

(3)「針を刺しますよ!」は禁句

「針を刺す」という言葉は、想像するだけで、全身が逃避反応準備状態となってしまうので、「針」とか「刺す」という言葉は極力使用しないように心掛ける。

「まず、局所の痛み止めをしますからね! 今、押さえてるところがチカッとしますよ!」と言いながら、強く爪で刺入点を圧迫し、圧迫を解除すると同時にその部位に針を刺入する。

(4)痛いのは体表

深く刺入した針を徐々に浅くしながら、等速で局所麻酔薬を注入していくと、患者さんは針先が皮膚表面直下になったときにいちばん痛みを訴える。このことからも、皮膚表面がもっとも神経分布が密であり、皮下脂肪組織には神経の分布は少ないことがうかがえる。したがって局所麻酔は、皮下よりも皮膚に近いところにたっぷり、それも注入速度を遅くしながらゆ~っくりと注入する。

(5)靭帯の局所麻酔は不要

靭帯にはまったく局所麻酔をしなくても棘間靭帯に針を進めていくときに痛がる患者はほとんどいない。アキレス腱を切って「いやー、激痛でした!」と言った患者は皆無であることからも、腱や靭帯は知覚神経分布は乏しく、ほとんど痛みを感じない。靭帯に局所麻酔をしてしまうと、脊椎麻酔のためのガイド針や、硬膜外針から液体が噴出して、偶発的硬膜穿刺と誤認する結果ともなるので、靭帯には局所麻酔は行うべきでない。

(6)局所麻酔用の針で棘間を探る

脊椎麻酔のガイド針や硬膜外針に比べれば局所麻酔針の方が細いので、針で棘間を探るのなら、本針ではなく、局所麻酔をするときに、同時に少し深く刺入して、間違いなく棘間で、針を進めることができるかどうか探っておく。CVライン確保時の細い針による試験穿刺と同様である。

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