硬膜外麻酔:何をどれだけ?

硬膜外麻酔に使用する局所麻酔薬の種類や量をどうやって決めているだろうか?

【1】薬液の種類~最初は短時間作用性で

最初、硬膜外穿刺を行って硬膜外カテーテル留置するときと、手術開始までに硬膜外麻酔の効果を確認する段階では、比較的短時間作用性のキシロカインで行うことにしている。カテーテルの留置が適切であるかどうか判断しかねる段階では、長時間作用性のものや高濃度のものを使用するのは避けるべきである。

カテーテルが適切に留置されていることが確認できてから長時間作用性のものや力価の強いものを使った方が安全である。所要時間の長い手術では、キシロカインに続いて、長時間作用性のロピバカインを使用している。

重度心疾患のある患者さんでは、局所麻酔薬による交感神経遮断→低血圧を避ける目的で、低濃度のキシロカイン+フェンタニルか、フェンタニル単味を生食で希釈して硬膜外投与している。


【2】薬液の量と濃度~年齢に応じて濃度を調節

ワンショットで投与する局所麻酔薬の量は、麻酔範囲の拡がりに影響を与えるであろうから、身長の高い患者さんでは多く必要とし、身長の低い患者さんでは少なくて済むであろう。

一方、使用する濃度は、高齢者になるにしたがって、1分節あたりの必要薬用量(mg)が年齢に応じて直線的に低下するので、投与量と濃度を同時に変化させるよりは、投与する薬液量は一定にしておいて年齢に応じて濃度を下げていくのが合理的である。

硬膜外の刺入点と留置カテーテルの先端が術創の中央付近にあるとして、すご~く大雑把にいうと、脊椎1分節あたり1ml、5分節くらいを効かせるつもりで5mlを使用している。もちろん、切開創がそれよりも大きくなる場合は、その分節に応じて投与量を増やすべきである。

硬膜外麻酔に使用する薬液量は、後から追加が可能なので、脊椎麻酔ほどには厳密に決定する必要はないが、もっとも重要なのは、一定時間内に投与される「濃度×量」(つまり薬剤のミリグラム数)である。年齢や神経活動性に応じた濃度で、術創を十分にカバーできるだけの容量の薬液を投与することが望ましい。

キシロカインの場合、50歳以下でのワンショットの投与量を100mg(2%キシロカイン 5ml)とすると、年齢が10歳増えるごとに10mgずつ減量する。例えば80歳では、70mgとなり、1.5%キシロカインなら70÷15=4.7mlということになる。私は、通常75歳以上では、1.5%(1%キシロカインと2%キシロカインを等量混合)を、75歳以下では、2%を使用している。

ロピバカインの場合、50歳以下でのワンショットの標準投与量を30mgとすれば、年齢が10歳増えるごとに5mgずつ減量する。

50歳代以下→ 0.6%×5ml=30mg
60歳代  → 0.5%×5ml=25mg
70歳代  → 0.4%×5ml=20mg
80歳代  → 0.3%×5ml=15mg

このような濃度の局所麻酔薬は、1%ロピバカインを「調整したい%×10」mlだけ10mlのシリンジに吸った後に、生食を吸って合計10mlになるようにすれば調整できる。つまり

50歳代以下→ 1%ロピバカイン 6ml + 生食 4ml = 0.6% 10ml
60歳代  → 1%ロピバカイン 5ml + 生食 5ml = 0.5% 10ml
70歳代  → 1%ロピバカイン 4ml + 生食 6ml = 0.4% 10ml
80歳代  → 1%ロピバカイン 3ml + 生食 7ml = 0.3% 10ml


【3】私の典型的な投与パターン(身長160cm程度の平均的な50歳代の成人の場合)

(1)初回硬膜外穿刺時、あるいはカテーテル留置直後にキシロカイン5ml
(2)執刀前に「リペインティング(二度塗り)」でキシロカイン5ml
(3)キシロカインの効果が切れる30~40分後にロピバカインを5ml
(4)90分後に、ロピバカインを2~3ml

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