超高度肥満患者の脊椎麻酔

 先日、超高度肥満(BMI=42、日本肥満学会基準 肥満度 4 度)の患者さんの脊椎麻酔を担当することになった。患者さんは30 代男性で、膝関節鏡の手術であった。例によって、睡眠時無呼吸症候群があり、夜間は CPAP マスクを使用しているとのことなのでできれば全身麻酔は避けたい。

 これまで経験したもっとも高度な肥満患者さんの体重は 110 kg だったので、今回の 135 kg は、私にとっては未体験ゾーンだった。通常メルクマールとする腸骨稜も非常に分かりにくく、CV ライン確保用に使用しているエコーで、あらかじめ穿刺レベルを確認した。

 しかし、実際には厚い皮下脂肪層が圧迫で簡単に前後左右に移動してしまうので、皮膚にマーキングしたところでほとんど役には立たない。エコーで参考になりそうなのは、棘突起までのおよその穿刺の深さと、穿刺レベルだ。しかし、やはりこれも皮膚の圧迫で容易に深さも変わってしまうので、あまり役には立たなかった。

 結局、いつもどおりに、棘突起の左右を丹念に圧迫して正中を同定して、穿刺針を垂直に刺入し、骨にあたってしまうようなら穿刺針の刺入角度を頭側や尾側に振りながら、穿刺可能な棘間を見つけて、さらに針を進めていく。そして、患者さんに左右腰部~下肢への放散痛を確認しながら、針の進行方向を微調整していく。

 いつもは 25G の 90 mm スパイナル針を使用しているが、ガイド針を使用するため実際の最大穿刺距離は 80 mm 程度になってしまうので、今回は、ガイド針の必要ない 22G の 90 mm 針を使用した。

 15 分ほど悪戦苦闘したが、なんとかクモ膜下穿刺に成功し、髄液の逆流を確認できた。しかし、この時、左手は、皮膚を渾身の力で圧迫しており、90mm 穿刺針の 87mm は皮下に埋没しており、薬液の入ったシリンジを接続するために、左手を離そうものなら、穿刺針が皮下組織に押し戻されて位置ずれを起こしそうであった。

 そこで、周りにいた介助の看護師に「手袋して手伝って!」と声をかけ、私の左手は皮膚を圧迫したままで、右手で穿刺針のハブを保持し、「このシリンジを接続してくれ! まず逆流確認してみて! 逆流あるね? じゃ、ゆっくり注入して・・・、最後にもう一度逆流確認して・・・、OK!」。

 ということで、前回 110 kg の患者さんの時もそうだったが、やはり一人での穿刺は不可能であった。クモ膜下穿刺までは一人でできるが、薬液注入の際には、もう一本手が必要となった。

 高度肥満患者さんの脊椎麻酔に際しては、清潔な手を 3 本準備しておくことが必要だ。

 翌日の麻酔後診察では、脊麻後頭痛もなく、麻酔は成功であった。
 

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