タイミング・プリンシプルのまとめ

 Priming Principle は、非脱分極性筋弛緩薬の効果発現を早めるために、筋弛緩効果が発現する閾値以下の少量を予め投与しておく方法である。

Rapid tracheal intubation with vecuronium: the priming principle.
Schwarz S, Ilias W, Lackner F, Mayrhofer O, Foldes FF.
Anesthesiology. 1985 Apr;62(4):388-91.

これに対して、Timing Principle は、筋弛緩薬の投与のタイミングを鎮静剤投与よりも先に行なうことで、意識消失から気管挿管までの時間をできるだけ短くしようとする方法である。

Rapid tracheal intubation with vecuronium: the timing principle.
Culling RD, Middaugh RE, Menk EJ.
J Clin Anesth. 1989;1(6):422-5.

いずれも迅速導入時に、意識消失から気管挿管まで時間を短縮するためのテクニックである。

最初、ベクロニウムでこのようなテクニックが紹介された後、ベクロニウムよりも短時間作用性の非脱分極性筋弛緩薬であるアトラクリウムやロクロニウムで同様のテクニックの応用がなされている。

<アトラクリウム>
1.Priming principle with atracurium.
Nielsen HK, May O, Ravlo O, Bach V.
Acta Anaesthesiol Belg. 1990;41(4):313-7.

2.Rapid tracheal intubation with atracurium: the timing principle
Kwong Fah Koh, Fun Gee Chen
Canadian Journal of Anaesthesia August 1994, Volume 41, Issue 8, pp 688-693

<ロクロニウム>
1.Tracheal intubation with rocuronium using the "timing principle".
Sieber TJ, Zbinden AM, Curatolo M, Shorten GD.
Anesth Analg. 1998 May;86(5):1137-40.
ロクロニウム 0.6 mg/kg を投与し、患者の筋弛緩の徴候(眼瞼下垂)が認められたらチオペンタール 4-6mg/kg を投与。45秒後、あるいは、 60秒後に気管挿管。

2.Rocuronium versus succinylcholine for rapid-sequence induction using a variation of the timing principle.
Nelson JM, Morell RC, Butterworth JF 4th.
J Clin Anesth. 1997 Jun;9(4):317-20.
ロクロニウム 0.6mg/kg 投与 20 秒後にチオペンタールを投与し、その 60 秒後に気管挿管。

これまでの Timing Principle は、いずれも、筋弛緩薬の投与後に、十分な筋弛緩が得られるように 40-60 秒の待ち時間を設定していた。

しかし、昨今、筋弛緩薬を使用しなくてもレミフェンタニルを使用すれば十分な挿管条件が得られることが分かったきた。

The optimal dose of remifentanil for acceptable intubating conditions during propofol induction without neuromuscular blockade
Journal of Clinical Anesthesia Volume 24, Issue 5 , Pages 392-397, August 2012

What is the optimal remifentanil dosage for providing excellent intubating conditions when coadministered with thiopental? A prospective randomized dose-response study
European Journal of Anaesthesiology: July 2010 Volume 27(7) p 653-659

ならば、「それほど筋弛緩薬が十分な効果を発現するまで待つこともないんじゃないか?」ということで、
Modified Timing Principle が登場。

フェンタニル 1.5 μg/kg を静注投与と 2 分間の前酸素化後、リドカイン 60mg とロクロニウム 0.6mg/kg に続けてプロポフォール 1.5mg/kg 投与し、意識消失(眼瞼下垂と呼名反応の消失)が確認された直後に挿管。


では、当ブログならではの方法 ==> 「Priming & Modified Timing Principle」

あらかじめ、ロクロニウムのプライミング量 0.06 mg/kg とフェンタニル 1-1.5μg/kg を投与しておき、2 分後に、ロクロニウム 0.54 mg/kg とプロポフォール 1.5mg/kg 投与し、意識喪失が確認された直後に挿管。
このようにすれば、Modified Timing Principle のサクシニルコリンよりもやや挿管条件が劣る点を改善することが可能だ。

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  • ロクロニウム投与のタイミングはどうするか?

    Excerpt: ロクロニウムの投与の仕方には、「プライミング」、「タイミング」などというキーワードが存在する。投与しようとする量を、経静脈的に一気に注入するのは「ボーラス投与」。 Weblog: 麻酔科勤務医のお勉強日記 racked: 2016-11-15 14:55