短時間手術時の麻酔のコストパフォーマンス

 今日は、短時間の手術時の麻酔に使用する薬剤費用について考えてみる。具体的には、慢性扁桃腺炎に対する扁桃摘出術時の全身麻酔である。通常は1時間以内に終了する手術である。

<使用する薬剤の単価>
・1%プロポフォール注「マルイシ」 薬価:1961
・エスラックス静注25mg/2.5mL 薬価:587
・アルチバ静注用2mg 薬価:2495
・フェンタニル注射液0.1mg 薬価:304
・セボフルラン吸入麻酔液「マイラン」 1mL :49.10
・ブリディオン静注200mg 薬価:9947
・アトロピン硫酸塩注0.5mg 薬価:92
・ワゴスチグミン注0.5mg 薬価:92

 最近の通常の全身麻酔で使用する薬剤の単価を見ると、圧倒的に高額なのはブリディオンである。上に挙げた他の薬剤や、ソセゴン(ペンタジン)注射液15mg の薬価:69、レペタン注0.2mg の薬価:149 に比較するととんでもなく高いのだ。

 フェンタニル 1A=2mL とセボフルラン 10mL は、いずれの麻酔法でも同様に使用すると仮定して、それ以外の薬剤の費用を比較してみよう。ちなみに、フェンタニル 1A=2mL とセボフルラン 10mL の費用は、

-フェンタニル1A=304
-セボフルラン10mL=49x10=490
---------------------
¥794

以下、()内はフェンタニルとセボフルランの費用を加算したもの

(1)麻酔法1:プロポフォール+エスラックス通常量で挿管して、ブリディオンで拮抗した場合
通常、成人では
-プロポフォール1A=1961
-エスラックス2V=587x2
-ブリディオン1Vx9047
----------------------
¥13082(13876)

(2)麻酔法2:プロポフォール+エスラックスを通常量の1/3~半量で挿管して、アト・ワゴ=1:2 で拮抗した場合
通常、成人では
-プロポフォール1A=1961
-エスラックス1V=587
-アトロピン1A=92
-ワゴスチグミン2A=92x2
----------------------
¥2827(3621)

(3)麻酔法3:プロポフォール+アルチバで挿管
通常、成人では
-プロポフォール1A=1961
-アルチ1V=2495
----------------------
¥4426(5220)

(4)麻酔法3で、アルチバを4等分して他の患者と共用
-プロポフォール1A=1961
-アルチ1/4V=2495÷4
----------------------
¥2584(3378)

(5)麻酔法3で、プロポフォールも2等分して他の患者と共用
-プロポフォール1/2A=1961÷2
-アルチ1/4V=2495÷4
----------------------
¥1604(2398)

 何も考えずに、薬剤を湯水の如く使用すると、14000 円くらいの薬剤費が発生する(麻酔法1)が、スガマデクスの使用を控えるだけ(麻酔法2・3・4・5)で、半分以下に薬剤費を抑制できる。麻酔の質はいずれの麻酔法でもさほど変わらないのではないかと思う。

 麻酔法2のように、エスラックスの使用を控えて、最終的に高分子物質であるブリディオンの使用を避ければ、アナフィラキシーショックの危険性も低減できるというメリットもある。

 また、覚醒時に筋弛緩の拮抗の必要がない麻酔法(麻酔法3・4・5)、アルチバ併用で挿管して、アルチバを短時間持続投与した場合でも、5000 円以下にできる。

 さらに、予め他の患者との共用を考えて、極力節約を心がければ、2400円にまで減少させることができる。現実的には難しいかもしれないが。

 毎日、一人の麻酔科医が1万円の薬剤費の節約に努力すれば、全国の麻酔科医1万人で1億円の医療費の節約が可能である。年間にすると実働日数 250 日として、 250億円の医療費の節約になる。

 日本全体の医療費総額が年間 37 兆円というから、これに比べれば無に等しいと言えばそうかもしれないが、このような無駄遣いを医療全体にわたって見直していけば、目に見える削減にもつながるのではないかと思う。

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