Q:呼吸数を指標としたフェンタニル維持投与の方法とは?

A:通常、気管挿管して人工呼吸をしている場合、患者さんが痛がっているかどうかは、「疼痛モニター」として標準的評価法が存在しない現在のところ、「痛み刺激」→「交感神経の緊張」→「血圧上昇と頻脈」という間接的なモニター・パラメータを見て判断している。

「急に血圧が上がって、頻脈になっている。これは痛がっているな~!」と。しかし、そういった反応はモニター上、ワン・テンポもツー・テンポも遅れて出現する臨床症状である。

それらよりも、もっと鋭敏なバイタル・サインは、実は「呼吸数」である。強い痛み刺激が加わると、急に呼吸が速くなり、いわゆる「呼吸速迫」といった状態になる。

フェンニタルの鎮痛有効濃度は、効果部位濃度で 1ng/ml 以上とされ、一方呼吸抑制作用が著しくなるのは、2ng/ml 以上とされている。したがって、通常、フェンタニルによって鎮痛を行う場合は、フェンタニルの鎮痛効果があり、なおかつ呼吸抑制がない 1~2ng/ml で維持すればよいことになる。

しかし、この維持鎮痛濃度の範囲は、手術侵襲の強さによって変動する。大きな手術侵襲が加わる場合には、より高い濃度側にシフトする。

一般的なフェンタニル投与のアルゴリズムは、呼吸数が 8~10 回/分(軽い呼吸抑制がある)であれば、十分な鎮痛域にあると判断して、追加投与は行わず、これよりも呼吸数が多くなれば、鎮痛が足りないと判断して追加投与するというものである。

このフェンタニルの投与法は、通常は筋弛緩薬を使用せずに麻酔を導入し、ラリンジアルマスク・エアウェイで気道確保を行って、なおかつ調節呼吸ではなく、自発呼吸下で全身麻酔を行う場合によく使用される方法だ。

個人的には「ラリマ・フェンタ麻酔」と呼んでいるが、一般的な名称かどうかは知らない。手術の前半、特に執刀前は、呼吸数を 8~10 回/分を目標にフェンタニルの追加投与を行い、手術後半は、次第に呼吸数をより正常に近い 10~15 回/分で管理することが多い。

手術が終了した時点で、急に侵襲が少なくなって呼吸数が減少し、呼吸抑制が著明となることがあるからだ。呼吸数が 5~6 回しかなければ、ちょっと退室許可は出しづらい。

ラリンジアルの良い適応である、四肢や体表手術で「ラリマ・フェンタ麻酔」を行っているが、成人では、フェンタニル 100μg/時 くらいで管理できることが多い。

この麻酔法では、呼吸抑制を意識しながら、鎮痛に必要なフェンタニルを追加投与していくので、気管挿管して調節呼吸した症例に比べて、覚醒後に痛みを訴えることが少ないという利点もある。

ただ、フェンタニルを追加投与した時に、その効果が出現するのに 3~4 分を要し、「即効性」とは言い難く、急に強い痛み刺激が加わった時には、追加投与が間に合わず、あせって追加投与を繰り返していると、今度は逆に過量投与による徐呼吸となってしまうこともあって、なかなかスリルのある面白い麻酔法である。

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  • Q:鼻骨骨折整復術の麻酔はどうするか?

    Excerpt:  鼻骨骨折の整復は、鼻腔内に金属のヘラを挿入して、天井側に向けて患者の頭部が持ち上がるくらいの強い力を加えて行われる、傍で見ていて何とも「むごたらしい」手術である。 Weblog: 麻酔科勤務医のお勉強日記 racked: 2015-11-01 10:58