Q:麻酔導入の薬剤:フェンタニル、プロポフォール、ロクロニウム、リドカインの目的と投与順序は?

A:プロポフォールは、鎮静剤に過ぎず、それ自体には、鎮痛作用(抗侵害刺激作用)がない。気管挿管にしろ、ラリンジアルマスク挿入にしろ、生体にとっては、ある程度の侵害刺激である。気管挿管は手術侵襲以上の侵害刺激であることは、20 年以上前からエビデンスとして確立している。

プロポフォールだけで気管挿管を行うのは、患者さんは何も訴えはしないが、ほとんど「拷問」に等しい行為である。したがって、気管挿管やラリンジアル挿入を伴う麻酔導入に際しては、抗侵害刺激作用のあるフェンタニルやレミフェンタニルを併用するのが現代的な麻酔のスタンダードとなっている。

しかし、気管挿管を行う際には、プロポフォールとフェンタニル、あるいはレミフェンタニルだけでは、体動を十分には抑制できないことから、通常は筋弛緩剤であるロクロニウムを併用することによって、気管挿管に適した条件を作り出している。

ところが、プロポフォールもロクロニウムも投与時に血管痛があり、麻酔導入時に患者さんを苦しめてしまう原因となる。これを少しでも緩和するために、フェンタニルの前投与や、血管内皮の局所麻酔の目的でリドカインを投与している。

また、このリドカイン自体は、局所麻酔薬であるが、フェンタニルほどではないにしろ 、喉頭展開と気管挿管に対する血行動態反応を和らげる効果もあり、麻酔導入にとって好都合な薬剤である。
【麻酔導入剤薬の使用目的】

● プロポフォール:「鎮静」~意識消失作用
● フェンタニル:「鎮痛」~抗侵害刺激作用
● ロクロニウム:「筋弛緩」~体動を抑制
● リドカイン:「血管内皮の局所麻酔」+「血行動態反応の抑制」
フェンタニルの効果部位濃度が最高となるのは、投与 3~4 分後であること、プロポフォールのは効果部位濃度が最高となるのは、1.6 分後であること、キシロカインの血管内皮に対する局所麻酔作用が発揮されるのは最短であろうこと、ロクロニウムの作用が十分発揮されるのは 2 分程度とされることから、その投与順序は以下の順となる。
【麻酔導入剤薬の投与順序】

1、フェンタニル:前酸素化開始時に投与し 1~2 分待つ
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2.リドカイン
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3.プロポフォール、あるいは、ロクロニウム
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4.ロクロニウム、あるいは、プロポフォール

プロポフォールを先に投与するのが良いのか、ロクロニウムを先に投与するのが良いのかについては、議論がある。

ある麻酔科医は、「プロポフォールを投与して鎮静が得られたのちに、換気が可能であることを確認してから、ロクロニウムを投与するべきである。でないと CICV(Cannot Intubation, Cannot Ventilation)に陥る可能性がある。」と主張している。

別の麻酔科医は、「通常、睡眠時にも呼吸障害のない患者であれば、プロポフォールを投与して換気不能に陥るのは、患者自身が声門を閉じたか、レミフェンタニルによる胸壁筋強剛が起こったことが原因であり、それはロクロニウムを投与することで解消するので、換気ができようができまいが、いずれにせよロクロニウムを投与するので、ロクロニウムを先に投与しても構わない。」と主張している。

ロクロニウムを先に投与するメリットは、意識消失から気管挿管操作開始までの時間(つまりバッグマスク換気の時間)を短縮できることである。また、患者の息こらえ、喉頭痙攣の出現を回避でき、胃への無用な送気と、それに引き続く逆流(誤嚥)などをきたす可能性を低下させることができる。
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また、ロクロニウムの作用を短時間で拮抗することのできるスガマデクスが臨床使用できるようになったことで、ロクロニウムの先行投与、つまり後者の主張が是認されつつある。

ちなみに、私は、後者の順番で投与している。通常はいつも Timing Principle である。ただし、気道障害が予想される場合は、前者で行うようにしている。

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