Q:麻酔器の最低限のチェックとは?

A:麻酔科学会から「麻酔器の始業点検」というガイドライン(8ページ)が出されている。麻酔器の異常は患者の安全性に直結するので、きちんと行なうに越したことはない。

自家用車の始業点検を毎日やって乗っている人はほとんどいないと思うが、バスやトラック、タクシーの運転手さんとか、車を運転すること自体が仕事の最も重要な部分となっている人は、きちんと始業点検をしているはずだ。それと同じだ。麻酔科医にとって、麻酔器は右腕も同然だ。

私たちも「麻酔のプロ」なんだから、プロらしく仕事をするには、麻酔器の始業点検の仕方くらいはきちんと心得ておいて、実際にできないといけない。しかし、毎日、麻酔のたびに毎回やってたら身が持たない。

当院では、早朝に ME 室スタッフが始業点検をしてくれているので、最低限の点検項目としては、患者さんに麻酔導入剤が投与されて無呼吸になったときに、手動換気ができること、つまり、麻酔回路にリークがなくバッグで加圧ができること(麻酔回路のリーク・チェック)だけは、確認しておかなくてはならない。

麻酔回路のマスクを外してLコネクタの先を左手の親指で塞いで、ポップ・オフ・バルブをクローズにして、酸素フラッシュして麻酔バッグを膨らませてからバッグを加圧する。回路圧が 30 cmH2O まで上がって 10 秒間落ちないことが確認できたら、OKだ。

だが、超緊急手術とか、急いでいて確認を怠ってしまうこともあるだろう。午前の手術が終わって、午後の次の患者搬入まで 3 分しかなかったら、昼飯を掻き込む時間はあっても、麻酔器の始業点検どころか、回路のリーク・チェックさえできないこともある。

いざ、麻酔導入剤を注入して患者さんが目の前で無呼吸になって、「さあ、バッグでマスク換気しよう!」としたら、酸素フラッシュしてもバッグが膨らまない、加圧できない、患者さんは無呼吸のまま・・・・。

「あってはならないこと」だが、そんなこともあるんだよ。でも、もしそうなったらどうする?

(1)バッグ・バルブ・マスク:麻酔器周囲や手術室内にあれば、それを使う。「アンビュー持ってきて!」と叫ぶ。

(2)マウス・トゥ・マスク:手近にアンビューがなければ、患者さんの顔に麻酔用マスクを両手を使って押し当てて、両手で下顎を挙上しつつ、マスクのコネクタ接続部を口でくわえて、呼気を吹き込む。

(3)マウス・トゥ・マウス:いわずと知れた蘇生法。マスクのフィッティングが悪くて、換気が十分行なえない場合は、これしかない。

とりあえず、以上のいずれかを行ないつつ、同僚の麻酔科医か、麻酔器についての知識がある人(ME室スタッフとか)をコールして、麻酔器の点検をしてもらって問題を解決した後に、麻酔器によるマスク換気に戻す。

●ありうる麻酔回路のリーク箇所

1.ソーダライムを交換した際に、キャニスタがきちんとはまっていない。

2.麻酔回路の蛇管に穴が開いている。

3.麻酔回路部品がきちんと接続されていない。

4.麻酔器の吸気弁と呼気弁の蓋がきちんと閉められていない。

他にもいろいろありうるが、一番直近で麻酔器に加えた操作が疑わしい箇所の最有力候補だ。

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