Q:調節呼吸による全身麻酔後に自発呼吸を出すにはどうするか?

A:全身麻酔というからには、鎮痛、鎮静、筋弛緩のいずれの要素もある程度存在する状態である。

筋弛緩がベターッと効いていたら自発呼吸は出るはずもない。また、鎮静を揮発性麻酔薬で行ったのであれば、揮発性麻酔薬の呼気濃度が高い(つまり脳という効果部位での濃度がまだ高い)状態では、なかなか自発呼吸は出ない。揮発性麻酔薬は中枢性の呼吸抑制作用が強い。

さらに、鎮痛剤として多量のオピオイドを使用していた場合は、その効果部位濃度が呼吸抑制域よりも下がっていなければ、自発呼吸は出ない。

他の麻酔科医がどうやっているのかあまり真剣に観察したことがないので、以下はあくまでも私の個人的な方法である。

手術が終了した時点、あるいは、終了前に、必要でなくなった薬剤から、中止していく。通常は、(1)筋弛緩薬 がもっとも作用時間が長く、早く必要でなくなるので閉創が開始になった時点位でオフにする。
(2)手術終了 5 分前位にはレミフェンタニルは中止する。術後のためにフェンタニルを間欠投与していた場合には、効果部位濃度が 1~1.5 ng/ml 前後になるように調節しておく。
(3)手術終了時点で、鎮静剤(プロポフォールやセボフルラン)を中止する。

プロポフォールなら、効果部位濃度が 1μg/ml 以下、セボフルランなら、呼気濃度が 0.5 % 以下になるまでは、人工呼吸を続行する。鎮静剤の呼吸抑制作用を少なくするためである。

自発呼吸を出すための 1 つのポイントは、呼吸中枢から「呼吸しろ!」というインパルスが発射されたときに、呼吸筋が動いて自発呼吸ができるくらいに筋弛緩が回復していなくてはならないということ。

まずは、この点を確認するために、TOF≧2 であることを確認する。通常、これ以下の場合は、リバース薬が多量にいるので、(特に、拮抗薬としてブリディオンを使用する場合には、高くつくので)TOF=2 となるまで待つ。

筋弛緩モニターがない場合には、気管内吸引を行って、咳嗽反射を誘発して、筋弛緩がある程度切れてきていることを確認する。まったく咳嗽反射が見られない場合は、筋弛緩がまだ深すぎるか、オピオイドの効果がかなり残っているかである。<関連記事>Q:筋弛緩モニターが使用できない時の、アバウトな筋弛緩度の評価法とは?

そこそこの咳嗽反射が見られれば、筋弛緩は回復過程にあるので、筋弛緩の拮抗を行いながら、調節呼吸を中止して「手動」にして、バッグを時々加圧してマニュアル換気しながら(低換気の状態にして)、患者の体内に二酸化炭素を貯めて、呼吸中枢を刺激して自発呼吸の出現を待つ。

自発呼吸を出すための 2 つ目のポイントは、二酸化炭素を体内に貯めることである。過換気の状態(二酸化炭素分圧が低い状態)では自発呼吸は出現しない。慢性的に高二酸化炭素血症である COPD 患者でない限り、第 1 の呼吸ドライブは、二酸化炭素分圧である。

一度、パルスオキシメータを自分の指に付けて、2 分間呼吸を止めてみよう。普通の人は、1 分もすれば、かなり苦しくなって、呼吸運動をしたくなる(これが呼吸インパルス)はずである。通常、無呼吸状態では、二酸化炭素分圧は、4mmHg/分 の速度で上昇するとされる。

2 分まで呼吸を止めれた人は、よく頑張りましたネ。滅茶苦茶苦しいですよね。でも酸素飽和度はほとんど下がらなかったでしょう?息を止めた時に、苦しいのは酸素が足りないからではなくて、まずは二酸化炭素が体内に貯留するからで、その高二酸化炭素血症が、呼吸中枢から「呼吸しろ!」というインパルスを発射させるトリガーになるのだ。

筋弛緩の拮抗が十分行われ、呼気二酸化炭素が十分高いにも拘わらず、自発呼吸がなかなか出現しない場合は、おそらくはオピオイドの効果が遷延しているので、オピオイドの効果が呼吸抑制域よりも下がってくるのを待つか、適応があると判断した場合には、オピオイドの拮抗薬ナロキソンを使用する。

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