Q:末梢静脈ライン確保のコツは?

A:末梢静脈ライン確保は、いつまで経っても難しい。内頚静脈が極細くて穿刺が難しい患者さんは非常にまれだが、末梢静脈は適当な静脈がなかなか見つからず、ライン確保に難渋することがしばしばある。

上肢をしっかり運動させている人は、前腕皮静脈も発達している。なぜなら、筋肉運動をするためには、酸素と基質が必要であり、必然的に上肢の血流が豊富でなくてはならない。その結果として、供給された血液を中枢に送り返すための静脈も太くなくてはならないからだ。

前腕の皮静脈を見ただけで、その患者さんが日頃どれくらい上肢を運動させているのかは、一目瞭然である。関節や筋肉に慢性的に痛みがある患者さんの皮静脈は非常に貧弱である。典型的には、慢性関節リウマチで上肢の運動障害のある患者さんなどは、皮静脈の発達が非常に悪い。

若年者は、高齢者に比べて感受性が高く、手術に対する緊張と、手術室の室温が比較的低いために、血管が収縮してしまっていることが多い。したがって、若年者はリラックスさせてあげることや、適当な室温にしておくことも重要な下準備である。

肥満患者ではなかなか適当な静脈が見つからないことが多いが、手関節の皺のある部分では辛うじて、静脈を視認できることが多い。これは、日常的に動かしている手関節部分では、必然的に皮下脂肪が局所的に少なくなっているためだ。

目標とする血管を可能な限り怒張させて、ターゲットを大きくしておくことは、穿刺を成功させる上で非常に重要である。CV ライン確保時に、トレンデレンブルグ体位に加えて、PEEP を併用するのと同様である。

駆血帯を巻くだけではなくて、「グーパー・グーパー」と前腕の運動を行わせることで、前腕への血流を増進させ、また、筋肉内にプールされている血液を、筋肉外へ、そして必然的に表在性の皮静脈内へと押し出させる。

ターゲットとする血管の上を 2~3 本の指で「トントン」と何度も叩いてやると、血管内皮細胞から血管拡張物質が放出されて、血管が怒張してくる。原理が本当かどうかは知らないが、目に見えて血管が怒張してくるのは確かだ。

皮膚表面をビシバシ叩くと赤くなるでしょう? 物理的な刺激によって、毛細血管が拡張して血流が増加したために赤くなる。これと同じ原理だ(と思っている)。

血管の上をトントンするくらいはそんなに痛いことではない。自分でやってみれば分かる。これに比べると、皮膚に静脈留置針を突き刺すのは格段に痛い。何度も痛い思いをさせないように、しっかりトントンして静脈を怒張させて、一発で確保することが患者さんに対する優しさだと思っている。

いざ留置針を刺そうとしたときに、特に橈骨遠位側で血管にアプローチしようとしたときに留置針と皮膚との角度が、患者さんの握り拳のせいで十分に水平に近くできないことがある。

こんな時は、「ちょっと、手首を小指側に曲げてみてくださいね~。」と言いつつ、患者さんの手関節を尺側へ屈曲させると、静脈へのアプローチが非常にしやすくなる。
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若年者は、比較的脂肪組織がしっかりしているので、静脈が皮下で動くことは少ないが、高齢者では、皮下脂肪組織が貧弱になっており、静脈が簡単に皮下で移動してしまう。穿刺しようとすると逃げてしまうのだ。

このような時、表在静脈のなかでも、逆Y字型になった部分の股間を狙うと、血管が逃げないので、成功率が高い。
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また、特に静脈が逃げそうな場合には、左手で穿刺部遠位側の皮膚を手前に引っ張っておいて穿刺すると血管が逃げない。しかし、カテーテルが血管内に入ったと思って、皮膚を引っ張っていた左手を離してしまうと、組織が近位側に移動して、せっかく血管内に入っていた留置針の先端も血管外に逸脱してしまうことも多い。

そこで、末梢静脈ライン確保の手技としては、(1)「右手で留置針を保持して穿刺し、左手で外筒(カテーテル)を進める方法」と、(2)「左手は、患者の皮膚を手前に引っ張ったままにしておき、穿刺した右手だけで外筒(カテーテル)を進める方法」の2つの手技を習得しておくべきだ。

皮膚を手前に引っ張っていた左手を離すと、大きく皮膚組織が移動してしまいそうなときは、後者の方法でカテーテルを進めるようにする。具体的には、2~3 つの方法がある。

① 右手の親指の爪か示指で、カテーテルのハブ部分を押し進めて、カテーテルを留置する。
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② 針とカテーテルが共に血管内に留置されていることがほぼ確信できるのなら、内筒(金属針)を 1~2 cm 引き抜いて(刀を外筒という鞘の中に収めておいて)、外筒を持って内筒と共に血管内へと進める。

③ 介助者(別の人)に「外筒だけ進めて!」と依頼する。

これらのテクニックを駆使しても末梢静脈にカテーテル留置が困難な時は、次のステップに進む。
「末梢ライン確保が困難な時の「外頚静脈穿刺」

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