Q:SVV とは何か?

A:昔から、全身麻酔で人工呼吸していると、動脈ラインの圧波形が、高度の脱水や循環血液量不足の場合に、呼吸性に変動することが知られていた。

人工呼吸の吸気には、胸腔内圧が陽圧となり、心臓への静脈還流が減少する。一方、呼気には、胸腔内圧が平圧に近くなるために、静脈還流が増加する。この静脈還流量の増減が、心拍出量の増減を誘発して、動脈ラインの圧波形が呼吸性に変動することになるわけである。

実際には、右心系と左心系に及ぼす影響は異なっている。上記の説明は左心系と右心系をひっくるめての心臓パフォーマンスの説明である。

右心系については、人工呼吸の吸気には、静脈還流の低下によって右心房への血液流入は低下し、従って右室から肺循環への拍出量は低下するが、呼気には、胸腔内の陽圧が解除されるために静脈還流量は増加、ひいては右室から肺循環への心拍出は増加する。

左心系については、人工呼吸の吸気には、胸腔内圧陽圧のために肺静脈は圧迫されて左心房への血液流入はむしろ増加し、さらに左心房自体も胸腔内陽圧によって圧迫を受けて収縮が促進されて、左室への血液流入は増加する。その結果として、全身への拍出量は増加する。

したがって、人工呼吸の吸気時には、右心系への静脈還流は低下して右室から肺への拍出量は低下するが、左心系への静脈還流は増加し、全身への心拍出量は増加することになる。

十分な循環血液量、したがって十分な静脈還流がある場合には、少々の胸腔内陽圧では、静脈還流はそれほど低下しないが、循環血液量の減少がある場合には、通常の人工呼吸時の胸腔内陽圧によっても静脈還流量は顕著に低下し、したがって心拍出量も低下して、動脈ラインの圧波形が呼吸性に大きく変動することになる。

昔の麻酔科医は、この動脈ラインの圧波形の現象を読み取って循環血液量の適否を判断し、呼吸性変動が大きい場合には、変動幅が少なくなるまで輸液負荷を行ない、呼吸性変動が少ないのに血圧が低い場合には昇圧薬や強心薬を使用するなどしていた。

この点に着目して、心拍出量の呼吸性変動の大きさを誰でも客観的に評価できるように考案されたのが、SVV(stroke volume variation)であり、日本語に訳せば、「1 回心拍出量変動」とでもなるであろうか。

Edwards 社の FloTrac Sensor によって算出されるパラメータで、文献的には、13% 以上で「輸液反応性あり」つまり、輸液負荷を行なうことによって、心拍出量を増加させることができる状態であるとされている。

計算式=SVV(%)=(SVmax-SVmin)÷ SVmean

Stroke Volume などと名付けてはいるが、このパラメータの算出に当たっては、実際には、1 回拍出量とは関係なく、昔の麻酔科医が行なっていたのと同様に、単に動脈圧波形の収縮期の最大値と最小値を見て、動脈圧波形の変化だけから、上記のような単純な計算式によって導かれたものに過ぎないので、動脈ラインさえモニターできる機械であれば、どのモニターでも算出して表示可能なパラメータである(特許だけの問題?)。

画像

図は、フロートラック システムのアルゴリズム - Edwards Lifesciences より拝借しました。

また、これに類したもので、動脈ラインの圧波形曲線ではなく、パルスオキシメータの脈圧波形で同様の輸液反応性の指標となるパラメータを算出しようとするものが、PVI(Pleth variability index)である。

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