ペンシルポイント針の穴の向きが平均局所麻酔薬用量に及ぼす役割

The role of the direction of the pencil point spinal needle hole on the mean local anaesthetic dose
European Journal of Anaesthesiology: June 2013 - Volume 30 - Issue - p 133-133

・くも膜下麻酔中、脊髄針の穴の向きが平均局所麻酔薬用量[MLAD]に及ぼす役割は、まだ評価されていない。著者らは、針穴を頭側か、あるいは尾側のいずれかの方向に向けて、クモ膜下ロピバカイン(RC) 0.75% +フェンタニル 15μg を 26G Sprotte 針から投与したときの MLAD を測定した。

・倫理委員会の承認後、待機的膣式子宮摘出術(VH)を予定した年齢 55~75 歳、ASA Ⅰ~Ⅱの 50 人の女性は、脊髄硬膜外法を用いて、側臥位で L2- 3 椎間から腰椎穿刺を受けた。硬膜外腔を 18G テューイ針で同定し、その内腔を通して 26G Sprotte 針で硬膜を穿刺した。患者は Sprotte 針の穴を尾側(CA 群)か、または頭側(CE 群)に向けるよう無作為に割り当てられた。0.75% Rc の投与量は、それぞれ 3mL(22.5 mg)を開始用量で、ディクソンとマッセイの上下法にしたがって投与された。両群とも、フェンタニル 15μg を溶液に添加した。口頭アナログ疼痛スコア>20/100 か、あるいは知覚遮断が T8 皮膚分節に及ばない場合を有効でない用量と定義して、次の患者には 0.1mL(0.75mg)ずつ増減した。統計解析は、両側 t 検定を行い、P<0.01 をもって有意とみなした。

・Ce 群の平均平均用量[SE]は、17.1[3.73]mg、95% 信頼区間 14,98-19,22 であった。Ca 群の平均用量[SE]は、23.75[1.55]mg、95% 信頼区間 22,98-24,52 であった。群間差はで統計学的に有意である(P<0.001)。

・VH に際してのクモ膜下麻酔導入時に 26 G Sprotte針の穴の向きは、0.75% ロピバカインの MLAD に影響を与える。VH にクモ膜下麻酔を使用する場合、局所麻酔剤の用量は、Sprotte 針の穴が頭側に向いているか尾側に向いているかによって局所麻酔薬の用量を選ばなくてはならないし、また、異なる用量を比較する場合には、針穴の方向を認識しなくてはならない。

[!]:そうなんだよ。穴の向きがどっちに向いているかは脊椎麻酔の麻酔高に大きく影響する。この点を統一せずに用量だけで比較試験をやったっていい加減な結果しか出ない。ずさんな研究をやって、「有意差がない。」という結果を出すのは、非常に簡単だ。「脊椎麻酔の効果は個人差が大きく、体重や身長は関係ない。」などと言ったり、「個人差が大きいから一律の用量を使用したほうが確実だ。」などとのたまう論文が横行する結果となる。少なくとも、この研究と以下に示す同様の研究では、穴を尾側に向けた場合、頭側に向けた場合に比べて、同じ麻酔高を得るために、薬液用量を平均 40% も増量しなくてはならない。

<関連記事>

膣式子宮摘出術でウィテカー針のベーベルの方向とくも膜下 0.75% ロピバカインの平均所要量との関係
※ 今回の論文は、上記論文の Whitacre needle を Sprotte needle に変えただけで、研究方法、結果、結論のすべてがほとんど同じだ。

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Whitacre と Sprotte は、どちらもペンシルポイントで、見た目は穴の大きさが違うくらいだから、研究結果もほとんど同じというわけだ。

くも膜下腔での薬液の広がりのイメージは以下の図のようなものだ。もしも、くも膜下腔が髄液でだけ構成されているのならば、時間と共に、拡散により、全体として均質な濃度になってしまうが、実際には、脊髄や馬尾といったくも膜を含めた神経組織が存在するので、このような薬液の拡がりに伴って、神経表面にどんどん局所麻酔薬分子が吸着されていって、薬液が注入された部分を中心として局所麻酔薬は分布して麻酔領域が固定し、結果的には、麻酔高に差が生じると考えられる。
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Quincke 針(針の先端が斜めにカットされている)では、ベーベルの向きが麻酔高に与える影響は Whitacre や Sprotte ほどには明確ではない。研究結果として有意差を出すためにはかなり多くの症例を必要とするだろう。

しかし、通常の局所麻酔でさえ、皮下に形成される局所麻酔薬による皮膚の膨隆は、ベーベルの向きによって異なることはよく経験されることであり、「推して知るべし」である。

<参考>
脊髄くも膜下麻酔の投与量の決め方:脊椎麻酔の処方計画

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