気管支ブロッカー使用時のテクニック

 二十数年ぶりに日本臨床麻酔科学会に出席することができた。そこで、学会で得た情報のメモである。

・情報源;日本臨床麻酔学会 第34回大会 11/2 12時30分 ランチョンセミナー16
・タイトル:「気管支ブロッカーの弱点を克服ーいつも左DLTで大丈夫?-」
・座長:澤村 成史 先生
・演者:吉村 達也 先生
・スポンサー:Cook Japan 株式会社

● 一側肺虚脱のメカニズム
・肺の虚脱には2相がある。
 第1相は、肺がクロージングキャパシティに至るまで(末梢気道が閉塞するまで)
 第2相は、その後の全無気肺に至るまで。

● 肺をスムーズに虚脱させるためには
・第1相をスムーズに虚脱させるには、気胸が起こった後に、肺を加圧せずに肺内ガスが肺外に流出しやすくしてやること。
・壁側胸膜が破れて気胸が起こったら、人工呼吸を1分間停止しておく。こうすることで、クロージングキャパシティに至るまで、つまり末梢気道が閉塞するまで肺内のガスが急速に流出して肺が虚脱してくる。
・第2相をスムーズに虚脱させるためには、肺血流によって残った肺内ガスが急速に運び去られる必要がある。そのためには、第2相の肺内ガスに窒素が含まれないようにすることである。
・そのためには、気胸が起こる前に、肺内を純酸素か、あるいは酸素+亜酸化窒素で換気しておき、肺内に窒素が含まれないようにしておくことだ。

ということで、

● 気管支ブロッカー(BB) を使用したときに、スムーズに肺を虚脱させるためには、
1.気胸が起こる前に、「純酸素」換気か、「酸素+亜酸化窒」素換気にして、肺内から窒素を追い出しておく。
2.気胸が起こったら、ブロッカーカフを虚脱させて、1分間無呼吸の状態にする(第1相の虚脱がスムーズに起こる)、ブロッカーカフが膨らんだままでは、肺内ガスは、非常に細いブロッカー・カテーテルを通してしか肺外に排出されないのでいつまで経っても肺が虚脱しないのである。
3.1分経過したら、ブロッカーカフを膨らませて、人工呼吸を開始する。
4.ブロッカー側の肺内には、窒素が存在しないので、肺内ガスは急速に血液に吸収されて、第2相の虚脱がスムーズに進む。
5.全無気肺が完了したら、換気ガスの組成を、酸素飽和度を見ながら空気+酸素に変更する。

※ ここで知っておくべきことは、酸素は本来血液には溶解しにくいガスだが、血液にはヘモグロビンが存在するので、ヘモグロビンが酸素を強力に結合してくれるために、酸素で満たされた肺胞は急速に無気肺へと虚脱してくれる。また、亜酸化窒素は、窒素と違って、液体に対する溶解度がはるかに大きいということだ。酸素と同様に亜酸化窒素で満たされた肺胞は急速に無気肺へと虚脱してくれる。

ちょっとしたテクニックで、BB による肺虚脱がスムーズに得られる。

● BB の留置位置について
・右肺にブロッカーを留置する場合、右上葉分枝は気管分岐部から比較的短い距離で分岐している(教科書的には2.5cmだが、日本人では平均1.5cm程度)ために、ブロッカーカフの(教科書的な)留置位置は気管分岐部直下に限局されてしまう。
・このような留置位置では、手術操作で、ブロッカーカフが容易に主気管支の分岐部に落ちてしまって、両側の肺換気が不能になってしまい、これが BB が不評の一因ともなっている。

・しかし、要は、右肺が換気されなければよいのだから、気管支の上葉分枝を含めてブロッカーで塞いでしまえばよい、つまり、ブロッカーカフの近位端が上葉分枝口をぎりぎり塞げるように留置すれば、それでよいのである。こうすることで、ブロッカーカフは、簡単には主気管支の分岐部に落ちてしまうことはなくなる。

[!]:なるほど~! 吉村 達也先生、ありがとうございました。
たいへん勉強になりました。m(,,)m

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