Q:「緊急手術ならすべてフルストマックと思え!」?

 「人を見たら泥棒と思え」ということわざがあるが、「緊急手術ならすべてフルストマックと思え!」というのが 20-30 年前なら正しかったかもしれない。

 しかし、昨今の日本の術前検査の事情から言えば、これは必ずしも正しいとは言えない。腹部や胸部の症状で来院して緊急手術となった患者さんでは、胸部写真だけではなく、かなりの確率で腹部の CT まで撮影してあること多い。

 立位胸部写真で「胃泡」が確認できず、胸部や腹部 CT 像で、胃内にほとんど食物残差の陰影がなければ、明らかに「フルストマック」ではないのだ。

 また、緊急手術の術前に「最終摂食は〇〇時です。」というやり取りがあるが、この時間だけが独り歩きして、「じゃ、最終摂食から 8 時間は経過してるね。」などという判断をする若い医師もいる。

 本当に重要なのは、「最終摂食」から「今」までの経過時間ではなくて、『最終摂食から「発症・受傷』までの時間だ。最後に摂取した飲食物が消化管の機能によって、胃内から小腸へと移動するのに十分な時間があったかどうかがを判断する必要がある。

 急に症状が出たり、外傷を負った場合には、その時点で、交感神経系が優位となり、急速に消化管機能が低下することになる。

例えば、朝 7 時に朝食を摂取して、登校途中の 8 時頃に交通事故にあった小学生は、たとえ、手術室に搬入されたのが午後 2 時であり、最終摂食から 7 時間が経過していようとも、消化管が機能していた時間は 1 時間程度しかないので「フルストマック」と見なすべきだ。

 また、そのような状況であるのなら、「あと何時間くらい手術を遅らせれば安心か?」と問われても、「あと 2 時間遅らせれば大丈夫でしょう。」などとは言えない。

 遅らせれば遅らせるほどにやや安心感は高まるが、その日のうちに手術に持ち込むのなら、すぐに手術をしたって、数時間後にやったって、いずれにしても「フルストマック」扱いでやらないといけないので、手術を遅らせる意味はほとんどない。

 しかし、同じく朝 7 時に朝食を摂取して、昼休みの休憩時間に友人とふざけていて受傷した場合には、消化管が機能していた時間は 5 時間を見込める。ほとんど、フルストマック扱いする必要はないのだ。

 日常的に確認している最初の事項が、必ずしも最重要事項ではなく、その次に確認する事項との兼ね合いで真の重要性が決まってくることもある。

 当たり前のことなんだが、こんな初歩的なことが理解できていないのでは麻酔科研修医は失格である。

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