胸部 CT 像での簡易な胸水量の推定法

 以前、日直で救急外来の診療をしていたときに、心不全の患者さんが来院した。胸部写真と胸部 CT を撮影して、心不全で循環器科での入院が必要と判断して、同期の循環器科の医師をコールして入院加療を依頼した。

 「胸水が結構溜まってて、700mL くらいは溜まってるようだ。」と話して診療録にもそう記載した。彼は、素直に承諾してくれて入院の運びとなった。
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 しばらくして、「なんで、胸水量がそれくらいあるって分かるの?」と質問された。

 「Total Lung Capacity(総肺気量)は、両側で 4-5 リッターあるから、一側肺では 2 リットルくらいはあるんだ。胸部 CT 像の横断面で、面積比で、胸水が片側胸腔の 1/3 くらい占めてるから、2L × 1/3 で 700mL くらいあると思うんだけど・・ 」と話した。

 面積比で 1/2 くらいあれば 推定 1000mL だ。肺の含気がまったく見られないような片側の血胸では、2000 mL くらいの血液が胸腔内に存在すると推定できる。解剖学と生理学、そして、小学生の算数の当然の結果だと思うんだが・・・。

 また、このような病態では、肺実質にはほとんど障害がなく、拡散障害とか肺胞低換気は存在しないにもかかわらず、酸素化がかなり悪い。これは、肺実質が胸水や貯留した血液によって圧排されて、肺実質のかなりの部分が無気肺になっている。

 無気肺は、換気は存在しないが、肺血流は存在する。すなわち、肺血流の多くがシャント血流となって、酸素化されないままに左心系に還流してしまうために、いくら吸入酸素濃度を上げても、酸素化が今ひとつ改善しない。

 酸素化を改善する最良の方法は、胸水や貯留した血液をドレナージして、無気肺化した肺胞をリクルートメントして酸素化できる肺胞に戻してやることだ。

 心不全で胸水のある患者を日常的に診療している循環器の医師といえども、意外と生理学とか解剖学には興味がないのか? と思った次第である。

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