麻酔科医は、筋弛緩剤を投与する前に有効なフェイスマスク換気を確認する必要があるか?

Should anesthesiologists have to confirm effective facemask ventilation before administering the muscle relaxant?
J Anesth. 2015 Sep 3. [Epub ahead of print]

筋弛緩剤を投与する前に、麻酔導入後に効果的なフェイスマスク換気(FMV)が確立されるべきであるか否かについては継続的な論争がある。そのようなやり方の理論的根拠は、もしも FMV が効果的でないならば、筋弛緩されていない患者であれば、覚醒させることができ、その後、代替の気道管理法を考慮できるという信念である。しかし、麻酔薬に誘発された呼吸抑制と気道虚脱に曝されている麻酔のかかった患者で、重度の低酸素血症を発症する前に、十分な自発呼吸をうまく回復させることができる可能性は非常に小さい。一方、全体的なエビデンスは、筋弛緩が FMV の質を改善するか、変わらないままであることはあっても、悪化させることはなさそうであることを示している。また、筋弛緩は、声門上気道器具の留置や気管挿管といった、FMV がうまく行かず患者が低酸素症となった場合に必須となる可能性のある処置を容易にするであろう。したがって、麻酔導入後最も早い筋弛緩薬投与が、多分もっとも効果的で安全なやり方であろう。筋弛緩薬投与前の十分な FMV の証明についての主張は、エビデンスに基づくやり方というよりは儀式的である。だからもう止めるべきである。

[!]:私も同じ意見だな。麻酔(鎮静)のかかった、中途半端に咽喉頭反射、嘔吐反射が残っている患者に、下手にマスク換気をしようとすると、声門閉鎖のために胃に送気してしまって胃の膨満、嘔吐を誘発したり、分泌物を喉頭に押し込んでしまって喉頭痙攣を誘発したりする。はやく筋弛緩薬を投与してこうした不安定な状況から抜けさせなくては!

 少なくとも、気道管理にリスクのない患者では、鎮静剤と筋弛緩薬の同時投与は非常にスムーズな麻酔導入を可能とする。これに対して、鎮静剤を先行投与して、鎮静後にマスク換気が可能であることを確認しようとすると、しばしば換気困難に陥る。

 この換気困難の原因は、鎮静剤投与に伴う、舌根沈下による気道虚脱・閉塞だけではない。単に舌根沈下が原因であれば、通常は頭部後屈と下顎拳上を行えば、スムーズに換気できるはずである。しかし、多くの場合、そう簡単にはいかない。

 下顎拳上を行ってもうまく換気できない場合、その原因のほとんどは、マスクフィッティングや回路に問題があるか、患者が意識を喪失する際に無意識に行う、息こらえ、声門閉鎖、呼気努力による胸壁強剛と考えている。これらの換気困難の原因の多くは、筋弛緩薬を投与することにより、予防できたり改善することができる。

 ということは、鎮静剤を投与した後に、マスク換気がうまく行ってもいかなくても、どのみち筋弛緩剤を投与して挿管を試みるのである。換気がうまく行かないからと言って、そのまま覚醒させることなんてほとんどありえない。あるとすれば、鎮静剤投与前に、その患者の気道確保困難のリスクに気が付かなかった場合だけだろう。


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1.正常な上気道解剖を有する麻酔下の患者で、マスク換気に及ぼす筋弛緩の効果

2.タイミング・プリンシプルのまとめ


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