Q:覚醒遅延を起こさないためには?

下手な麻酔をすると、患者さんだけじゃなくて、周囲のスタッフや手術患者の主治医にも迷惑がかかってしまうことがある。

しばしばあるのは、「覚醒遅延」だ。覚醒遅延を起こしてしまうと、手術室内や麻酔回復室での滞在時間が長くなって、次の症例の開始時間を調整したり、部屋替えをしたり、はたまた、看護師スタッフや麻酔スタッフの割り当ても変更しなくてはいけなくなり、手術室運営上も、好ましくない。主治医にとっても、病棟でいくら待っててもなかなか患者が帰ってこないのでは、仕事が終わらない。

全身麻酔の 3 要素である「鎮痛」・「鎮静」・「筋弛緩」のうち、「覚醒遅延」は、通常、患者が必要とする量よりも過量の鎮静剤や筋弛緩薬を投与してしまった場合に発生する。したがって、これを回避する方策は単純である。鎮静剤を過量投与しないこと、筋弛緩薬も過量投与しないことだ。

鎮痛薬を十分量投与していれば、鎮静剤は少ない量で済むし、急な体動(ほとんどの場合は、疼痛が原因だ)も抑制できるので、「十分な鎮痛」を麻酔の主軸に置けば、鎮静剤と筋弛緩薬を過量投与しなくても済むわけだ。

患者特有の何かしらの病態があって、通常の患者よりもすごーくよく効いてしまうことも稀にはあるが、ほとんどの場合は、過量投与だ。

現在は、キレのよい麻酔薬が次々と開発され、鎮静度をモニターする器械も、筋弛緩をモニターする器械も身近になって使用できることが多くなり、覚醒遅延をきたす頻度もぐっと減ってきたのではないかと思うが、逆に、昨今は、高齢患者が増えてきたために、覚醒遅延をきたしやすい患者が増えたともいえる。

腎機能の低下があるために、通常量のロクロニウムが予想外に長く効くこともあるが、筋弛緩モニターを行っていれば、初回投与量がやや多めであったとしても、追加投与のタイミングが遅くなるので、それほど過量投与にはならなくて済む。

鎮痛剤が十分量投与されていれば、鎮静目的の揮発麻酔薬 1 MAC は過量投与と言えよう。何時間もの間、過量投与すれば、脂肪相に溶け込んだ揮発麻酔薬のために、麻酔からの覚醒が遅れることもしばしばある。

<覚醒遅延を起こさないために>
・麻酔のメインを鎮痛に置くこと。
・鎮静剤は過量投与しないこと。
・筋弛緩薬も過量投与しないこと。
・鎮静モニター(BIS)や筋弛緩モニター(TOF)が使用できるのなら、面倒くさがらずに使用すること。
・鎮痛剤と鎮静剤(揮発薬も含む)の投与量は、年齢効果を十分に考慮して投与量を増減すること。
 具体的には、鎮静薬や鎮痛薬は、40 歳以上では、年齢が 10 歳上がるごとに、10% 程度減少させる。

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