Q:全身麻酔からの覚醒時のお作法とは?

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十分な鎮痛をした上で、筋弛緩剤と鎮静剤の効果が消失すれば、患者は通常、自然と覚醒する。

・大きな声を出して、患者さんを覚醒させてはいけない。
・患者さんを叩くなどして不必要に大きな刺激を与えて覚醒させてはいけない。

大きな声を出したり、患者さんの胸を叩くなどして覚醒させていては、「私は麻酔が下手です。」と周囲に公言しているようなものである。傍らで見ていていかにも「みっともない」行為である。

麻酔導入時と同じくらいの大きさの声で、「手術が無事終わりましたよ。」と普通に話しかける。せいぜい、肩をトントンと軽く叩くくらいの刺激で患者さんを目覚めさせなくてはいけない。

そのためには、まず、筋弛緩が必要な処置が終わり次第、筋弛緩剤の投与を中止する。そして、さらに、手術が終了する段階、つまり、皮下縫合も終了して、あとは皮膚縫合だけという段階になったら、十分な鎮痛を確保しつつ、鎮静剤を徐々に減量して覚醒濃度まで下げる。

手術が終了するまで、漫然と鎮静剤を術中維持濃度のまま投与していてはいけない。プロポフォールで鎮静を維持していたのであれば、TCI の濃度を 1ng/mL まで落とす。セボフルランで鎮静を維持していたのであれば、吸入濃度を 0.5% まで落とす。こうすることによって、完全に手術が終了してから、覚醒に至るまでの時間をかなり短縮できる。

次いで、手術が完全に終了したら、プロポフォールなり、セボフルランなりの鎮静剤の投与を完全に中止する。筋弛緩が拮抗薬投与に適した TOF≧2 まで回復しているか、筋弛緩モニターを装着していない場合には、気管内吸引操作を行うことによって軽い咳嗽反射が 2 回以上出現することを確認してから筋弛緩の拮抗を行う。

続いて、プロポフォール TCI の場合には、TCI ポンプに表示された覚醒時間になるまで人工呼吸をしながら待つ。セボフルランの場合は、高齢者では呼気終末セボフルラン濃度が 0% になるまで、比較的若い患者では、0.2-0.3% になるまで人工呼吸を続行する。

この意味するところは、呼気終末セボフルラン濃度は脳内濃度を直接には反映していない。脳内濃度は、必ず呼気終末セボフルラン濃度よりは高いのである。したがって、呼気終末セボフルラン濃度が覚醒濃度である 0.3 MAC(セボフルランでは 0.5-0.6%)に達していても、ほぼ完全にまだ脳内濃度は覚醒濃度まで低下しておらず、そのような時期に、患者に話しかけても覚醒するはずはないのだ。

鎮静がプロポフォールの場合は、覚醒時間に達したら、セボフルランの場合には、上記濃度に達したら、患者さんに、麻酔導入時と同じくらいの大きさの声で「手術が無事終わりましたよ。」と普通に話しかける。

反応が得られない場合には、再度気管内吸引操作を行って、気管内の痰の残留がないことを再確認すると同時に、覚醒させるための刺激とする。それでも呼名反応が得られない場合には、もうしばらく人工呼吸を続行するか、人工呼吸を終了して、手揉みによる徐呼吸で血中の二酸化炭素分圧を次第に上昇させながら、自発呼吸の出現を待つ。

呼びかけに反応が得られるようになったら、「目が開きますか?」と尋ね、目が開かないようなら、瞼を上方に引っ張って他動的に開眼させてみるのも、患者に「開眼」動作を回復させるためのひとつの方法だ。「目を開けて」とか、「手を握って」というような簡単な命令に従うことができるようになれば、TOF モニターの値も当然十分回復しており、もう抜管しても良い覚醒レベルに達している。

後は、異常な徐呼吸がなく、定常的な自発呼吸が出現していることが確認できれば、型どおり「キ・コ・バ・コ」して、声掛けせずとも酸素飽和度が許容レベル以下に低下しないことと、麻酔回復スコアが施設基準以上に回復していることが確認できれば、帰室許可を出すことができる。

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