Q:迅速導入(RSI)はどうやるか?

※ RSI=Rapid Sequence Induction/Intubation

通常の急速導入に比べて、使用する薬剤群は同じだが、手順上でいくつか押さえるべき点がある。
・十分な準備
・十分な前酸素化
・薬剤群を連続的に一気に注入
・原則、バッグマスク換気をしない
・セリック手技(輪状軟骨圧迫)
・圧迫解除前にカフ注入


【1】 十分な準備

・急速導入の場合は、挿管困難セットや次善の策を常に準備しておく必要はないが、迅速導入の場合は、もしも1発で挿管できなかった時のために、すぐに次善の策を講じることができるように手近に必要な器具を準備しておく。物品を取りに走るための無駄な時間を費やさない。
・挿管失敗の危険性少なくするために 1 サイズ小さ目のチューブを選んでおく。
・気管チューブに必ずスタイレットをセットしておく。
・あらかじめ「スニッフィング位」を取っておく~「高い枕」と「下顎の突き出し」。これによって、適切な輪状軟骨圧迫がしやすくなる。
・吸引装置と吸引管の準備は絶対に怠らない。
・可能なら、別の麻酔科医と慣れたスタッフを招集しておく。

【2】 十分な前酸素化

・患者が少々苦しがっても、麻酔マスクを顔面にぴったりと密着させて、カプノグラフィ波形が適切に表示されていることを確認する。波形がきちんと出ていない場合には、顔面とマスクの間にリークがあり、このような状態で 3 分間酸素を流しても、十分な前酸素化は達成できない。
・NG チューブがあるために、マスクのフィットが悪くなるようなら、十分な吸引を行った上で抜去しておく方が良い。
・十分な前酸素化の達成は、時間ではなく、呼気酸素濃度の上昇を見て確認する。呼気酸素濃度は高ければ高いほど良いが、私は少なくとも 80% 以上になるまで待つようにしている。
・呼気酸素濃度が 80% 以上にならない場合(肥満、妊婦、もともと酸素化不良の場合など)、逆トレンデレンブルグ位(上体高位)にして、機能的残気量を増加させ、患者に深呼吸を繰り返すよう促す。

【3】 薬剤群を連続的に一気に注入

・鎮静剤と筋弛緩薬を一気に注入する。一気に注入する薬剤をあらかじめ 1 シリンジにプレミキシンングしておくと投与が煩雑にならなくて済む。→クラッシュ導入で最近やってる小技:「1シリンジ混注・押し入れ法」
・昔は、チオペンタール/チアミラール+サクシニルコリン
・スガマデクスが利用できるようになった昨今は、プロポフォール+ロクロニウム。しかし、どちらも注入時痛があるので、キシロカインも併用する。
・また、近年は、挿管時の侵害刺激に伴う交感神経緊張を緩和するために、フェンタニルかレミフェンタニルを併用するのが普通だ。
→ フェンタニルを併用する場合には、効果発現がゆっくりなので、前酸素化の間に先行投与する。
→ レミフェンタニルを併用する場合には、鎮静剤と筋弛緩薬と同時投与でよい。
・ロクロニウムは、急速導入時よりも多い 0.9mg/kg を使用するか、通常量の 0.6mg/kg を使用する場合には、前酸素化の間にプライミング量(1/10 量)を先行投与しておく。
・薬剤をルート内に注入し、押入れシリンジで確実に静脈内に送り込んだら、タイマーをスタートさせて、1 分後に挿管する。

【4】 原則、バッグマスク換気をしない

・十分な前酸素化が達成できていれば、薬剤注入から筋弛緩が得られるまでの間に、酸素飽和度の低下をきたすことはほとんどないが、もしも、十分な前酸素化が達成できていなかったり、筋弛緩を待つ間に急速に酸素飽和度が低下してくるようなら、20cmH2O を超えない圧で、慎重にバッグマスク換気を行うことはやむを得ない。
・手動で行うよりも、人工呼吸器の過剰圧を 20cmH2O に設定して、自動換気した方がベター。

【5】 セリック手技(輪状軟骨圧迫)

・前酸素化~意識消失までの段階では、軽い圧迫(10N)で嘔吐を誘発しないように行う。
・患者さんに「喉元を押さえますが、負けないように大きな息をしていてくださいね。」
・意識消失したら、しっかり圧迫(30N)する。
・気管挿管が終了して、カフにエアーを注入するまで圧迫を継続する。

気管挿管の確認は、通常の急速導入時と同じである。

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

  • ロクロニウム投与のタイミングはどうするか?

    Excerpt: ロクロニウムの投与の仕方には、「プライミング」、「タイミング」などというキーワードが存在する。投与しようとする量を、経静脈的に一気に注入するのは「ボーラス投与」。 Weblog: 麻酔科勤務医のお勉強日記 racked: 2016-11-15 14:54
  • Q:迅速導入の 7P とは?

    Excerpt: A:以下の 7 項目の頭文字を取ったもの。また、この順番に進めて行く。 Weblog: 麻酔科勤務医のお勉強日記 racked: 2017-05-18 15:34
  • Q:DSI(遅延導入気管挿管)とは何か?

    Excerpt: A:DSI(delayed sequence intubation) は RSI(rapid sequence induction/intubation:迅速導入気管挿管)に相対する言葉で、RSI が.. Weblog: 麻酔科勤務医のお勉強日記 racked: 2018-06-11 08:13
  • 麻酔のj迅速導入における偽手技と比較した輪状軟骨圧迫の影響:IRIS 無作為化臨床試験

    Excerpt: ・麻酔の迅速導入(RSI)中の輪状軟骨圧迫(セリック手技)の使用は、大規模な無作為化試験がない中で依然として議論がある。研究の目的は、輪状軟骨圧迫が行われていなくても、誤嚥の発生率は増加しないという仮.. Weblog: 麻酔科勤務医のお勉強日記 racked: 2019-01-20 07:42