Q:麻酔薬投与量と肝腎機能の関係とは?

日常的に使用している麻酔薬には、その投与経路と排泄臓器にはいろいろなパターンがある。
・揮発性麻酔薬:肺から吸収、肺から排泄。ほとんど体内での代謝は行われない。つまり、気化器のダイアルだけで、その血中濃度と効果部位濃度をコントロールできる。
・フェンタニル:経静脈的に投与し、肝臓で代謝排泄される。つまり、肝硬変や肝代謝排泄機能に障害のある患者では投与量を減量しなくてはならない。
・ロクロニウム:経静脈的に投与し、肝臓と腎臓に依存して代謝排泄される。つまり、肝硬変や肝代排泄機能に障害のある患者や腎機能障害患者では投与量を減量しなくてはならない。
・プロポフォール:経静脈的に投与し、肝腎機能にほとんど依存しない。肝腎機能の如何にかかわらず通常投与量を使用してもかまわない。
・ミダゾラム:経静脈的に投与し、肝臓と腎臓に依存して代謝排泄される。つまり、肝硬変や肝代謝排泄機能に障害のある患者や腎機能障害患者では投与量を減量しなくてはならない。
・レミフェンタニル:経静脈的に投与し、肝腎機能にほとんど依存しない。肝腎機能の如何にかかわらず通常投与量を使用してもかまわない。

肝機能の悪い患者では、揮発性麻酔薬とプロポフォール、レミフェンタニルは通常通り投与してよいが、フェンタニル、ロクロニウム、ミダゾラムは効果を確認しながら、その肝機能に応じて維持投与量を減量しなくてはならない。

一方、腎機能の悪い患者では、揮発性麻酔薬とプロポフォール、レミフェンタニル、フェンタニルは通常通り投与してよいが、ロクロニウムとミダゾラムは効果を確認しながら、その腎機能に応じて維持投与量を減量しなくてはならない。

以上、「減量しなくてはならない」としたのは、あくまで、追加投与量のこと、維持投与量のことである。ところが、負荷した用量は、循環血液量、そしてその直後には細胞外液で希釈されて、効果部位濃度となるから、正常肝腎機能を有する患者と同量を投与しなければ、期待した効果は得られない。肝臓が悪いからとか、腎臓が悪いからと言って、初期負荷量を減量すると期待した効果が出現しない。

肝腎機能の如何にかかわらず、「馬鹿の一つ覚え」的に投与しても良いのは、揮発性麻酔薬とプロポフォール、そしてレミフェンタニルである。しかも、肝臓が悪かろうが、腎臓が悪かろうが、体重が同じであれば、よほどの浮腫状態が存在しない限り、細胞外液量はほとんど変わらないので、初期投与する負荷量は変わらない。

これらは、昨今もっとも麻酔科医の好む薬物であり、「馬鹿でも麻酔ができる」非常に便利な薬物である。

初期負荷量の増減に主に関与するのは、肝腎機能ではなくて、アルブミン量である。血中に投与された薬物は、その多くが高分子物質である蛋白質に吸着されて、効果部位に到達できる遊離薬物は蛋白濃度が高いほど減少し、逆に蛋白濃度が低いほど増加する。

したがって、初期負荷用量は、患者の蛋白量によって増減し、維持量はその薬物の代謝経路に依存して増減するべきなのである。

フェンタニルの効果を有効にモニターする機器はないので、呼吸数と鎮痛効果を判断材料にするしかないが、ロクロニウムは、筋弛緩モニターでその効果を確認しながら追加投与、維持投与量を増減調節しなくてはならない。

肝腎機能障害のある患者でのミダゾラムの維持投与量の調節は、今のところ BIS モニターで鎮静度を評価しつつ増減するしかない。

肝腎機能障害のある患者では、BIS や TOF といった利用できるモニターは全て使用して、その維持量を調節するべきである。薬物濃度シミュレータは、肝腎機能障害まで考慮されているわけではなく、あくまで肝腎機能が正常と仮定した場合の濃度を表示しているに過ぎないので、肝腎機能障害がある場合には、薬物の種類によってはシミュレータの表示する濃度を信用してはいけない。

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