Q:ロクロニウム投与のタイミングはどうするか?

ロクロニウムの投与の仕方には、「プライミング」、「タイミング」などというキーワードが存在する。投与しようとする量を、経静脈的に一気に注入するのは「ボーラス投与」。

「プライミング」は、正式には「Priming Principle」という方法を指している。
「タイミング」は、「Timing Principle」という鎮静剤投与との関係における方法を指している。

【プライミング・プリンシプル(Priming Principle)】
非脱分極性筋弛緩薬の効果発現を早めるために、筋弛緩効果が発現する閾値以下の少量を予め投与しておく方法である。

【タイミング・プリンシプル(Timing Principle)】
筋弛緩薬の投与のタイミングを鎮静剤投与よりも先に行なうことで、意識消失から気管挿管までの時間をできるだけ短くしようとする方法である。

いずれも迅速導入時に、意識消失から気管挿管まで時間を短縮するためのテクニックである。タイミング・プリンシプルは挿管困難が予想される場合には、避けるべきであるとされている。しかし、迅速導入にしか使用してはいけないという理由はない。急速導入時に使用してもなんら構わないというのが昨今の考え方である。
<参考>
麻酔科医は、筋弛緩剤を投与する前に有効なフェイスマスク換気を確認する必要があるか?

ここでは、一般的な急速導入による麻酔導入時に使用する薬物を「フェンタニル(鎮痛)」、「プロポフォール(鎮静)」、「ロクロニウム(筋弛緩)」とし、薬物投与に伴う血管痛を軽減するために補助的に「キシロカイン」を使用することとし、また、ロクロニウムの投与量は急速導入時の標準投与量 0.6mg/kg として話を進めることにする。

<一般的な方法>
1.一般的には、挿管操作までに、作用発現時間がもっとも長くかかるフェンタニルを最初に投与する。ぴったりフィットの麻酔マスクによる前酸素化を開始するタイミングと同じころに行う。
2.3~5 分間の前酸素化によって呼気酸素濃度が 80% を超えたら、急速導入の本番開始である。
3.まず、後続する刺激のある薬物による血管痛を軽減するために、1% キシロカイン 5mL 程度を静注する。引き続き、プロポフォールを投与する。
4.プロポフォール投与の効果として、睫毛反射と意識の消失を確認後、ゆっくりとバッグマスク換気を開始する。
5.バッグマスクの換気が可能であることが確認できたら、ロクロニウム 0.6mg/kg をボーラス投与する(ここでタイマーをオン)。
6.三方活栓から投与したロクロニウムが留置針にまで届いて、本当に静脈内に届くまでの時間を考慮して、通常は、2~2.5 分後に気管挿管操作に移ることになる。

<プライミング・プリンシプルによる方法>
1.前酸素化を開始する、フェンタニルを最初に投与する、同時にロクロニウム 0.06mg/kg を投与する。
2.3~5 分間の前酸素化後、本番開始。
3.キシロカインを投与する、プロポフォールを投与する。
4.バッグマスク換気を開始して換気可能を確認できたら、残りのロクロニウム 0.54mg/kg を投与する(ここでタイマーをオン)。
5.1.5~2 分後に気管挿管操作に移る。
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<タイミング・プリンシプルによる方法>
1.前酸素化を開始する、フェンタニルを最初に投与する。
2.3~5 分間の前酸素化後、本番開始。
3.キシロカインを投与する、ロクロニウムを投与する。
4.プロポフォールで、ライン内にあるロクロニウムを押し入れ投与する(ここでタイマーをオン)。
5.呼吸が減弱するの見てバッグマスクを開始し、1~1.5 分後に挿管操作に移る。

<プライミング&タイミング・プリンシプルによる方法>
1.前酸素化を開始する、フェンタニルを最初に投与する、同時にロクロニウム 0.06mg/kg を投与する。
2.3~5 分間の前酸素化後、本番開始。
3.キシロカインを投与する、残りの ロクロニウム 0.54mg/kg を投与する。
4.直後に、プロポフォールで、ライン内にあるロクロニウムを押し入れする(ここでタイマーをオン)。
5.呼吸が減弱するの見てバッグマスクを開始し、1~1.5 分後に挿管操作に移る。
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プライミングを行うことで筋弛緩の効果発現を多少時間短縮できる。
タイミング・プリンシプルを使用することで、意識消失から筋弛緩までの時間を短縮できる。
プロポフォール投与自体が、ロクロニウムの押入れ操作になるので、押し入れシリンジに付け替える手間が省ける。

挿管困難が予想されない、通常の麻酔導入は、私はいつも<プライミング&タイミング・プリンシプルによる方法>でやっている。緊急手術時の迅速導入も、若干ロクロニウムの量を増やすこともあるが、基本的には同じ薬物投与方法で、バッグマスク換気を省略してやっている。

<関連記事>
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Q:迅速導入(RSI)はどうやるか?

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