Q:除睾術の麻酔はどうするか?

A:ややもすると、「会陰部に限局した手術であるから、サドルブロックでいいんじゃないの?」と考えがちだが、正解は、「脊椎麻酔で最低 Th10 を目標に麻酔を行う。」というものである。

「停留睾丸」という病態があるのはご存知だろう。

男児の生殖器異常としては最も多い疾患で、陰嚢内に精巣(=睾丸)が触れない状態である。精巣は胎児期には腹腔内にあるのだが、胎生3カ月ころに下降し始め、30~32週までに陰嚢内に降りてくる。これが途中で留まった状態が停留睾丸だ。

元来、睾丸は腹部臓器であって、最終的には陰嚢内に収まってはいるものの、精索と呼ばれる索状物でつながった腹部内臓なのだ。そして、その神経支配は、第10~11神経に由来する交感神経とされている。

このような神経支配については、すでに 60 年以上も前に明らかにされている。
吉田幸雄「睾丸握痛と脊髄損傷高位」(「脳と神経」1955年9月号)

陰嚢の神経支配はS領域であるが、陰嚢が内包している睾丸の神経支配は Th 10-11 領域である。

もしも、除睾術の際にサドルブロックを行なうと、陰嚢を切開するときには痛みはないが、いざ、睾丸を剥離しだすと痛みが出現してきて、摘出する際に精索を鉗子で挟もうものなら、「ギャ~~~~ッ!!!」と、激烈な内臓痛に襲われることになる。

【銘記】:除睾術の脊椎麻酔は、Th 領域まで効かせなくてはならない!

これは、睾丸の特異な解剖学的構造に起因するもので、L(腰椎)領域の麻酔(下肢の運動・知覚麻痺)は、全く必要がないにも関わらず、S 領域と Th 領域を同時に効かせなくてはならないために、その間に挟まれた L 領域も、無駄に麻酔せざるを得ない。

もしも、脊椎麻酔のレベルが不足していて、内臓痛が発生するようであれば、レスキューとして、術野から精索自体に局所麻酔を追加してもらおう。

実はその昔、そのような失敗をしたことがあるもので・・。

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