待機的帝王切開における晶質液同時負荷 vs 膠質液同時負荷:脊椎麻酔後低血圧と昇圧剤消費量

・母体低血圧は帝王切開に際しての脊椎麻酔のよく見られる副作用である。 膠質液負荷と昇圧薬の併用は、その予防と治療の標準と考えられていた。ヒドロキシエチルデンプンの安全性が議論されているので、著者らは膠質液を晶質液の同時負荷に置き換えた。著者らは、晶質液負荷の場合の方が、平均血圧の低下が大きくなると仮定した。

・ドイツのベルリンで行われた 2 施設での前向き観察臨床試験である。帝王切開を予定された妊婦が適格性について審査された。試験プロトコルと患者モニタリングは、両施設での帝王切開に際しての標準手術手順に基づいた。晶質液群からのデータは、2014 年 11 月から 2015 年 7 月までに前向きに収集された。

・主要評価項目は、脊椎麻酔導入後の平均血圧の中央値の低下であった。副次評価項目は、低血圧の発生率(ベースライン収縮期圧の 20% を超える低下、または 血圧<100mmHg)、昇圧剤と追加輸液必要量(mL)、徐脈発生率(心拍数<60 拍/分)、出血量、Apgar スコア、臍帯動脈血 pH であった。低血圧の場合、患者は心拍数に応じてフェニレフリンか、またはカフェドリン/テオドレナリンを投与された。p<0.05 をもって有意とみなした。

・前向きに登録された患者 345 名(晶質液負荷群 n=193 vs 膠質液群 n=152)を分析した。平均血圧の中央値の低下は、晶質液群の方が大きかった [34mmHg(25; 42mmHg) vs 21mmHg(13; 29mmHg)、p<0.001]。晶質液負荷群では、低血圧[93.3% vs 83.6%、p=0.004]と徐脈[19.7% vs 9.9%、p=0.012]の発症率も有意に高かった。昇圧薬の必要量、出血量、新生児の転帰については、群間で差がなかった。

・晶質液同時負荷の方が、膠質液同時負荷と比較して、平均血圧の低下が大きく、低血圧の発生率が多かった。しかし、新生児転帰は輸液剤種類によって影響を受けなかった。

[!]:膠質液の血管内に留まる性質からして当然の事だろうな。

「晶質液がよいか、膠質液がよいか」については、「どっちでもいいんじゃないの~」って考えている。血管収縮薬が主たる治療であって、輸液剤の質はどちらでもよいのではないか。そもそも脊椎麻酔後の低血圧は、血管運動神経の遮断によって麻酔域の動静脈の血管拡張が起こって、心臓にとっての後負荷が軽減するとと共に、静脈系に血液がプーリングされるために、心臓への血液還流(前負荷)が低下して、前方駆出が低下することによって起こっている。体液の不足や心筋抑制は起こっていないので、その原因から考えると、血管拡張を相殺するだけの血管収縮薬を投与すれば済むのであって、輸液や強心作用薬は必要ないはず、というのが個人的な考えである。

帝王切開に限って言えば、娩出時には胎盤が剥離した子宮内膜面からけっこう出血するので、どうせ輸液するのなら効率的に血管内液を補充できる膠質液を入れておいた方が循環管理は楽だとは思う。

【出典】
Crystalloid coloading vs. colloid coloading in elective Caesarean section: postspinal hypotension and vasopressor consumption, a prospective, observational clinical trial
Kaufner, L., Karekla, A., Henkelmann, A. et al. J Anesth (2018). https://doi.org/10.1007/s00540-018-2581-x

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