待機的帝王切開時の脊椎麻酔後低血圧の治療に用いたフェニレフリンとノルエピネフリンのボーラス投与力価

<ハイライト>
・フェニレフリンの ED95 は 43.1μg(95%CI:39.5~65.0μg)であった
・ノルエピネフリンの ED95 は 3.7μg(95%CI:3.5~4.7μg)であった
・昇圧剤の力価比は 11.3(95%CI:8.1~16.9)であった
・フェニレフリン 100μg は、ノルエピネフリン 8.8μg とほぼ同等である。

<要旨>
フェニレフリン1.png・フェニレフリンは、第一選択の昇圧剤と考えられているが、反射性徐脈と心拍出量低下を引き起こす可能性がある。ノルエピネフリンは、その直接的な陽性変時作用と反射性陰性変時作用のために、この問題を克服することが期待される。しかしながら、脊椎麻酔後低血圧管理に際してのその有効用量とフェニレフリンと比較した力価についてはの限られた情報しか利用できない。

・脊椎麻酔後低血圧をきたした 100 人の連続患者を、所定用量のフェニレフリンか、またはノルエピネフリンで治療した。1 分後の低血圧からの回復を「成功」とみなした。最初の患者の開始用量と試験用量較差(投与量の増減幅)は、フェニレフリン群で 100μg と 10μg、ノルエピネフリン群で 6μg と 0.5μg であった。その後の患者の用量は、上下連続割り当てのためのナラヤナ(Narayana)のルールに従って、前患者の反応によって決定された。フェニレフリンとノルエピネフリンボーラスの ED95 と ED50、それらの力価を計算した。

・プロビット分析を用いて、ED95 と ED50 値は、フェニレフリンについては 43.1μg(95%CI 39.5~65.0μg)と 33.2μg(95%CI 5.1~37.0μg)、ノルエピネフリンについては 3.7μg(95%CI 3.5~4.7μg)と 3.2μg(95%CI 1.8~3.4μg)であった。ノルエピネフリンとフェニレフリンの相対力価比は 11.3(95%CI 8.1~16.9)であった。

・本研究の結果に基づいて、ノルエピネフリンはフェニレフリンより約 11 倍強力である。低血圧の治療のためのボーラス用量として使用する場合、100μg のフェニレフリンは、8.8μg のノルエピネフリンとほぼ同等である。

[!]:ノルエピネフリンは、フェニレフリンよりも 11 倍強力であると。反射性徐脈が陽性変時作用によって相殺され、除脈が起こりにくい。

【出典】
Comparison of the potency of phenylephrine and norepinephrine bolus doses used to treat post-spinal hypotension during elective caesarean section
International Journal of Obstetric Anesthesia ? Mohta M, et al. December 17, 2018

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この記事へのコメント

ナマステ
2018年12月22日 07:31
このブログのおかげで、コツコツ勉強させてもらってます、ありがとうございます。これからも続けてください。
帝王切開の脊椎麻酔という点に限定するのでれば、徐脈や頻脈もいいですが、α作用による子宮血流の評価もしてもらいたいですね。
私自身は帝王切開の脊椎麻酔直後にアレストしを経験してからファーストチョイスはエフェドリンになりました。その効果みて必要ならばネオシネジンを投与するスタンスです。
周りを見ると最初の輸液にエフェドリン10mgとか混中してる先生もいますね。
SRHAD-KNIGHT
2018年12月23日 08:02
ナマステ様、コメントありがとうございます。
> α作用による子宮血流の評価もしてもらいたいですね。
エフェドリンは子宮血流を障害しないという理由から、昔から帝王切開に際しての昇圧剤の第1選択薬とされていました。しかし、直接にα作用による子宮血流を測定した研究については存じませんが、ここ10年間くらいのフェニレフリンとエフェドリンの比較研究から、胎児アシドーシスの点ではフェニレフリンの方が優れているという結果が出ており、「ファーストチョイスはエフェドリン」というのは見直されています。このことから、子宮血流はα作用によってそれほど障害を受けていないであろうことが証明されているように思います。
> 脊椎麻酔直後にアレストしを経験して・・・
たいへんな症例を経験されましたね。同僚が担当した脊椎麻酔後小児の心停止は経験がありますが、今のところ妊婦ではありません。個人的には、帝王切開に限らず、多くの脊椎麻酔症例で、脊椎麻酔直後に、15分程度で投与する100ml抗生剤にエフェドリン 12mg を混入して持続点滴しています。脊椎麻酔後の急速な血行動態変化をちょうど相殺してくれる感じです。500mlの輸液剤に混入したのでは血行動態変化に追いつかず、4mgずつの間歇投与が必要になることがほとんどですね。

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