Q:重症患者では無呼吸許容時間がなぜ短くなるのか?

A:重症疾患患者の無呼吸許容時間が短くなる理由は、その病態ごとに異なっていて、そう単純ではなく、複数の要因が関与している場合が多い。重症患者は、以下の 1 つ、または複数の理由で、健常患者よりも急速に動脈血酸素飽和度の低下をきたす。
・心肺病変;酸素供給を担う 2 つのポンプに支障があれば、全身への酸素供給能が低下する
・貧血;血液の酸素リザーブ自体が低下している
・低心拍出量;心臓の全身への酸素供給能が低下している
・代謝亢進状態;単位時間当たりの酸素消費が増加している
・換気/血流不均衡;肺から血液への酸素の取り込み能力が低下している
・疼痛;交感神経系の緊張は、代謝を亢進させて、酸素消費量が増加している
・気道閉塞;肺への酸素取り込み能が低下している
・呼吸努力の低下;肺への酸素取り込み能が低下している
Mort は、重症患者における前酸素化の有効性を研究した(後述)。不安定な重症患者では、最初の PaO2 が低いだけでなく、PaO2 の変化によって測定される 4 分間の前酸素化の利点も減少した。その後の喉頭鏡検査と気管挿管の間に、不安定な重症患者の 4 人に 1 人がある程度の酸素飽和度低下をきたした。対照的に、安定している重症患者(ASA IV)では、PaO2 は前酸素化と共に増加し、これらの患者のいずれも挿管中に酸素飽和度低下をきたすことはなかった。

Mort TC Preoxygenation in critically ill patients requiring emergency tracheal intubation. Crit Care Med. 2005 Nov;33(11):2672-5

緊急気管挿管を必要とする重症患者における前酸素化

・研究の目的は、緊急気管挿管に備えて重症患者で 100% 酸素による前酸素化の有効性を決定することであった。

・レベル 1 外傷センターの三次医療集中治療室での無作為化比較試験で、非侵襲的呼吸補助法に失敗し、気管挿管とそれに続く人工呼吸を必要とするた重症患者を対象とした。ベースラインの動脈血ガスを、非侵襲的療法と、バッグバルブマスクを用いた 100% 酸素療法の 4 分後に得た。非侵襲的酸素化と換気を最適化するために、他のマスク換気操作に加えて、タイトなマスクフィッティングが達成できるよう最善の努力がなされた。

・15 ヶ月間の研究期間中に連続的にて挿管された合計 42 人の患者が分析された。同時に行われた非侵襲的呼吸補助下のベースライン PaO2(平均値±標準偏差)は 67±19.6mmHg(範囲 43~88mHg)であり、100% 酸素による前酸素化4 分後に平均で 37 mmHg 増加して 103.8±63.2mmHg に増加した。合計 36% の患者が、ベースライン PaO2 にほとんど変化がなかった(±5%)が、前酸素化操作の後、19% のみがベースライン PaO2 を少なくとも 50mmHg 増加させた。

・重症患者は酸素投与の中断を許容する余裕がほとんどなく、したがって緊急気道管理中に低酸素血症の危険性がある。この臨床試験に記載したような前酸素化の努力は、喉頭鏡検査と気管内挿管時に低酸素血症に対する合理的な予防手段を提供する上でわずかに有効であるようだ。

【出典】
Preoxygenation in critically ill patients requiring emergency tracheal intubation.
Crit Care Med. 2005 Nov;33(11):2672-5.

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