Q:トラネキサム酸はどういった手術で使用するべきか?

トラネキサム酸3.pngA:日本麻酔科学会が提供している「麻酔薬および麻酔関連薬使用ガイドライン 第3版 第 4 訂 2015.3.13」の「XII その他 5.血液凝固に関する薬物」では、トラネキサム酸の「適応」の項に、以下のように記載されている。
(3) 各種手術における周術期出血量の減少を期待して予防的に使用
予定帝王切開術における出血量減少 ◆皮膚切開 10 分前に 1,000mg を 5 分かけて点滴静注する.

整形外科手術における出血量減少 ◆皮膚切開前に 20mg/kg を15 分かけて点滴静注する.

心臓外科手術における周術期出血に対する予防的投与
a)皮膚切開前に 10mg/kg を20 分かけて初期負荷静注し, 2mg/kg/hr で ICU 入室 2 時間後まで持続投与し,50mg を人工心肺回路へ追加する.腎障害患者では持続用量を調節する.
血清クレアチニン=1.6~ 3.3mg/dL:持続投与量を 25%減量
血清クレアチニン=3.3~ 6.6mg/dL:持続投与量を 50%減量
血清クレアチニン>6.6mg/dL: 持続投与量を 75%減量
b)皮膚切開前に 10 ~ 15mg/kg を 10 ~ 15 分かけて初期負荷静注し, 1 ~ 1.5mg/kg/hr で持続投与し,2 ~ 2.5mg/kgを人工心肺回路へ追加する.
脊椎手術における周術期出血に対する予防的投与
a)皮膚切開前に 2,000mg を 20 分かけて初期負荷静注し,100mg/hr で手術終了 5 時間後まで持続投与する.
b)皮膚切開前に 10mg/kg を20 分かけて初期負荷静注し,1mg/kg/hr で皮膚縫合まで持続投与する.
膝関節全置換術における周術期出血に対する予防的投与
a)ターニケット使用開始前に 10mg/kg を 30 分かけて静注し, 3 時間後に追加投与を行う.
b)ターニケット使用開始前に 10mg/kg を 10 分かけて静注し,10mg/kg をターニケット開放直後に投与する.
c)ターニケット開放前に 10mg/kg を 30 分かけて初期負荷静注し,1mg/kg/hr で術後 6 時間まで持続投与する.
術式ごとに、いろいろな投与法(初期負荷量と持続投与量)が記されているが、これらの投与法は、スタディで用いられた方法であって、その投与法が最適であるという検証は行われていない。また、術式ごとに投与法を変えなくてはいけない必然性も確たるものではない。

多くの術式に共通した投与方法としては、
「執刀前に 10~20 mg/kg を 10~20 分かけて初期負荷投与して、その後、手術終了後 2~6 時間まで 1~2mg/kg/h で持続投与する」
とまとめることができる。より具体的には、
1) 執刀前の抗生剤投与時にトラネキサム酸 1g(10mL)を点滴ボトル内に混注して初期負荷投与を行う。
2) 術中~術後の輸液剤 500ml につき、トラネキサム酸 0.5g(5mL)を添加して術後まで持続投与する。

心臓手術では、体外循環(人工心肺装置)を使用するため、循環血液が大量に異物に暴露されて、凝固線溶系が一気に活性化されます。凝固系は一部ヘパリンによってその進行がブロックされて血液の凝固が阻止されますが、線溶系の活性化を完全には阻止できません。そこで、体外循環から離脱後にかけて線溶系の亢進を抑制するために抗線溶薬を投与することは理にかなっています。

また、心臓手術以外でも、血管処理だけでは止血が困難な、骨を削ったり(関節形成術や脊椎手術)、筋肉や臓器を大きく切開したりする手術(子宮摘出、筋腫核出術)ではトラネキサム酸投与が出血量減少に有効であることが多くの研究で明らかにされています。

また、子宮の胎盤剥離面からの持続的出血をきたす、帝王切開時の出血や分娩後出血に対しても、出血量減少に役立つことが多く報告されています。

※ なお、上記引用文では、オリジナルから以下のように一部変更しています。
③脊椎手術周術期出血における周術期出血に対する予防的投与
→ 脊椎手術における周術期出血に対する予防的投与
⑤膝関節前置換術
→ 膝関節全置換術

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非心臓手術における麻酔科医のトラネキサム酸使用の調査

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