《レビュー》 腹腔鏡手術には第二世代の SGA を!

腹腔鏡下手術.png従来の開腹手術に比べて、腹腔鏡手術は、手術侵襲が格段に少なくなったが、麻酔管理は従来と変わらず気管挿管で管理されていることが多いようだ。患者体位を頭低位(トレンデレンブルグ体位)とし、気腹を行うことが、胃内容逆流の危険性を高めるために、気管挿管の方が安全だという理由からだ。しかし、近年、第二世代の SAD を使用して安全に管理できている報告が相次いでおり、そろそろ麻酔科も麻酔の低侵襲化に取り組まなくてはならないのではないだろうか。

消化管に炎症があるような症例は適応外として、腹部内臓に炎症のない、待機的な婦人科腹腔鏡手術や、待機的な消化器外科腹腔鏡手術で、所要時間が 3 ~ 4 時間以内の手術が、第二世代 SGA のよい適応ではないかと考えられる。

腹腔鏡手術を受ける小児患者における換気の妥当性に対する I‐gel vs 気管挿管の比較評価
Comparative evaluation of I-gel vs. endotracheal intubation for adequacy of ventilation in pediatric patients undergoing laparoscopic surgeries.
J Anaesthesiol Clin Pharmacol. 2019 Jan-Mar;35(1):30-35. doi: 10.4103/joacp.JOACP_249_17.
より新しい声門上器具の使用は腹腔鏡手術にまで拡大されてきた。小児腹腔鏡手術におけるこれら 2 つの器具の有効性を比較および評価するために本研究を実施した。待機的腹腔鏡下手術を予定している 80 人の小児が、無作為に i-gel か、または気管チューブ(ETT)群に割り当てられ、メーカー推奨に従って i-gel か、または ETT を挿入した。換気量は一回換気量 10 ml/kg で呼吸数 16 回/分、腹腔内圧は 12 mmHg の腹腔内圧までとした。心拍数と平均動脈圧に有意差は認められなかった。気腹後に PECO2 と最高気道内圧の有意な増加があった。気腹後、両群で分時換気量が有意に増加した。結論として、i-gel は換気妥当性の点で気管挿管に匹敵する。最高気道内圧の上昇は、I-gel の方が少ない。さらに、術後合併症は i-gel の方が少なかった。

腹腔鏡手術を受ける患者における声門上気道器具と気管チューブの比較:系統的レビューとメタ分析
Comparison between supraglottic airway devices and endotracheal tubes in patients undergoing laparoscopic surgery: A systematic review and meta-analysis.
Medicine (Baltimore). 2016 Aug;95(33):e4598. doi: 10.1097/MD.0000000000004598.
腹腔鏡手術を受ける患者で、声門上気道器具(SGA)と気管チューブ(ETT)の有効性の比較は、相反する結果をもたらした。そこで、本メタ分析で、著者らは腹腔鏡手術における SGA と ETT 挿入の間で、臨床成績と合併症の発生率を比較した。合計で 17 件の研究からの 1433 人の患者が最終分析に含められた。SGA と ETT は、初回試行挿入成功率(相対リスク[RR]1.01、95%信頼区間[CI] 0.99~1.03)、挿入時間(標準化平均差 1.57、95%CI -3.74~0.61)、口腔咽頭リーク圧(OLP)(平均差 -2.54、95%CI -7.59~2.50)に差はなかった。酸素飽和度低下(RR 3.65、95%CI 1.39-9.62)、胃への送気(RR 0.90、95%CI 0.48-1.71)、逆流(RR 0.98、95%CI 0.02-49.13)、誤嚥(RR 0.99、95%CI 0.01~78.4)の発生率にも群間差はなかった。しかし、喉頭痙攣(RR 3.12、95%CI 1.29~7.52)、抜去時の咳嗽(RR 6.68、95%CI 4.70~9.48)、嚥下障害(RR1.47、95%CI 1.12~1.95)、発声障害(RR 4.41、95%CI 1.25~15.55)、咽喉頭痛(RR 1.60、95%CI 1.33~1.93)、嗄声(RR 1.53、95%CI 1.29-1.81)は、SGA 群よりも ETT 群のほうが高かった。ETT 群のほうが SGA 群よりも、喉頭痙攣、覚醒時の咳嗽、嚥下障害や発声障害、咽喉頭痛、嗄声の発症率が高かった。したがって、SGA のほうが、腹腔鏡手術においては効果的な気道として臨床的に有用である可能性がある。

ラリンジアルマスクで婦人科腹腔鏡検査を受ける患者における胃逆流症:前向き観察研究
Gastric regurgitation in patients undergoing gynecological laparoscopy with a laryngeal mask airway: a prospective observational study
J Clin Anesth. 2017 Feb;36:32-35. doi: 10.1016/j.jclinane.2016.07.038. Epub 2016 Nov 11.
手術を受ける患者で、ラリンジアルマスクの使用は、気管チューブと比較して、良好な回復をもたらす。ラリンジアルマスクは、胃逆流のリスクが高いと考えられるため、腹腔鏡手術では十分に活用されていない。本研究は、ラリンジアルマスク(LMA)を用いた腹腔鏡下婦人科手術を受けた患者の口腔咽頭の胃内容物逆流の存在を評価することであった。ProSeal LMA を用いた全身麻酔下に腹腔鏡下婦人科手術を受けた健康被験者を研究に含めた。気腹のための最大腹腔内圧として 15mmHg の吹送圧が確立され、患者は 15°の角度でトレンデレンブルグ位に置かれた。被験者の下咽頭から採取した分泌物の pH を、術中の複数時点で測定した。口腔咽頭分泌物 pH≦4.1 は、胃内容物の逆流を示すものとした。80 人の被験者対象に、いずれの時点(T3~T9)における pH 測定の中央値(範囲)は 6.5(5.5~7.0)であった。各被験者の最低 pH の中央値(範囲)は 6.0(5.5-7.0)であった。下咽頭で検出された最低 pH は、総手術時間(P=0.9)、総気腹時間(P=0.17)、総トレンデレンブルグ位時間(P=0.47)と相関しなかった。腹腔鏡下婦人科手術を受ける健常患者における LMA の使用は安全であることを示唆している。

経腹式腹膜前修復(TAPP)における声門上気道器具と気管チューブとを比較した術後疼痛に関する無作為臨
A randomized clinical study on postoperative pain comparing between the supraglottic airway device and endotracheal tubing in transabdominal preperitoneal repair (TAPP).
Hernia. 2017 Feb 13. doi: 10.1007/s10029-017-1586-y. [Epub ahead of print]
経腹式腹膜前修復(TAPP)は、日本の鼡径ヘルニア治療に最も広く使用されている腹腔鏡技術でで。多くの研究で、開腹ヘルニア修復よりも疼痛が少なく回復期が短くなることを示している。しかし、術後痛は依然として懸念され、早期の術後痛の 1 つの原因は、気管チューブ抜去時の緊張や咳嗽である。声門上気道器具(SGA)の使用は、そのような訴えを避けるのに役立つ。腹腔鏡下 TAPP 手術を受けた、ASA-PS I/II の合計 144 人の成人患者を、無作為に A 群(SGA)と B 群(気管チューブ)の各群 72 人の 2 群に割り当てた、適切な大きさの i-gel が、気管チューブで確保した。A 群の最高疼痛の数値評価尺度スコアの平均の方が、B 群のそれより有意に低かった(2.10±2.05 vs 2.90±2.65; p=0.043)。A 群の方が、術後疼痛のレベルは B 群よりも早く低下する傾向があった。SGA 器具が腹腔鏡手術後の術後疼痛を軽減できることを初めて示したものである。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 6

なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い 面白い
ナイス

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック