成人心臓手術での脳近赤外分光法モニタリングと神経学的転帰:系統的レビュー

Cerebral Near-Infrared Spectroscopy Monitoring and Neurologic Outcomes in Adult Cardiac Surgery Patients: A Systematic Review

・近赤外分光法が、脳灌流の適切性をモニターするために、心臓術中に使われる。この系統的レビューでは、(1) 心臓術中の脳酸素測定値の低下が、脳卒中、術後認知機能障害(POCD)、せん妄と関係しているかどうか、(2) 脳酸素測定値低下是正を目的とした処置が神経学的転帰を改善するかどうか、を調査するために、成人患者で入手可能なデータを評価した。

・言語に制限を加えず、始めから 2012 年 1 月 31 日まで、PubMed、コクラン、Embase データベースを検索した。各文献について、追加的参考文献を調べた。オリジナルのデータを含んでいない場合(例えば、レビュー、補足)や、査読雑誌の完全な論文として発表されていない場合(例えば、要約だけ)は、除外された。特定された要約は最初に篩に掛けられて、該当論文の全文を 2 人の調査者が独立してレビューした。該当論文については、被検者数、手術術式、神経学的転帰の診断基準を記録した。

・包含基準を満たす、13 件の症例報告、27 件の観察研究、2 件の前向き無作為化介入試験を特定した。症例報告と観察研究は、局所脳酸素飽和度度(rSco2) モニタリングが人工心肺カニューレ位置異常を確認するのに使用できるであろうことを示唆する逸話的エビデンスを含んでいた。9 件の観察研究のうち 6 件は、急性の rSco2 酸素飽和度低下と POCD (Mini-Mental State Examination(n=3 研究)、または、より詳細な認知テスト(n=6 研究)に基づく)との関係を報告した。2 件の後向き研究は rSco2 酸素飽和度低下と脳梗塞、あるいは、術後の第Ⅰ・Ⅱ種の神経学的傷害との関係を報告している。観察研究は、サンプル数が少ないとか、術後短期間だけの評価であるとか、リスクの調整を行っていないとか、多くの限界を有していた。2 件の無作為研究は、術中に rSco2 酸素飽和度の低下を治療する処置の有効性を評価したが、1 件では、プロトコルへの遵守が不良であった。他の研究で、rSco2 酸素飽和度低下に対する処置は、処置しない場合と比較して、重大な臓器障害が少なく、集中治療室在室期間が短いことと関係していた。

・心臓手術中の rSco2 の低下は、人工心肺カニューレの位置異常(特に大動脈手術中の)を特定する可能性がある。心臓手術中の rSco2 低値とを術後の神経学的合併症を関連付けるには低レベルのエビデンスかしかなく、rSco2 酸素飽和度低下を改善する処置が脳梗塞や POCD を予防すると結論するには、データは不十分である。

[!]:大動脈への送血管の挿入・抜去時に、頸動脈圧迫を行うが、その際には、脳酸素飽和度は急速に低下する。そのことから考えても、急速に値が低下する場合には、脳潅流に重大な支障が生じており、極めて速やかに飽和度が上昇するように、(1) 人工呼吸中なら吸入酸素濃度を上げる、(2) 血管収縮薬を投与して脳潅流圧を上昇させる、などの脳への酸素供給を改善するための処置を行わなくてはならない。

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