Q:気管挿管は看護師が行っても良いか?

A:気管挿管という医療行為は、救急救命的な状況では、それなりの知識と技術があれば、救命のために医師ではなく、看護師、さらには医療関係者でなくても許されるだろう(少なくとも罪に問われることはないだろう)。

 しかし、日常的な医療行為としては、看護師に許される程度に侵襲度の低い行為ではないと思う。

 揮発性麻酔薬の効力は一般に「最小肺胞濃度」という薬剤固有の数値で表現されるが、100 人のうち 50 人が、気管挿管の刺激に対して体動と咳を示さない肺胞濃度(MACEI)は、皮膚切開に対して体動を示さない肺胞濃度(通常の MAC、最小肺胞濃度)の 1.4 倍ほども高い。

 つまり、気管挿管という医療行為は、それ程に、単なる皮膚切開よりもずっと侵襲度の高い医療行為だと言える。

 しかも、気管挿管という手技は、医師ならば誰もが実際にできる手技かと言えば、自信を持って行える医師は一体何割くらいだろうか。

 また、救命的な状況ではなく、全身麻酔に際しての気管挿管では、通常は、作用の強い鎮静剤(あるいは、全身麻酔薬)と筋弛緩薬を併用して行うことがほとんどだが、そのような薬品は、劇薬・毒薬に分類されるものである。

 生命体の基本的な生命維持機能である、意識、呼吸、循環といったインフラに大きな影響を与える薬物の投与量や、タイミングを判断して使用してよいのは、医師であると思う。

 もしも、「気管挿管も全身麻酔も、医師ではなく看護師にやらせればよい。」と言う暴言を吐く輩がいるとすれば、同じ論調で、「高血圧や糖尿病の投薬、急性胃腸炎や急性上気道炎に対する処方、一般開業医の外来診療も、看護師にやらせればよい。さらには、小手術も看護師にやらせればよい。」ということになる。

 気管挿管や麻酔よりは、はるかに侵襲度が低く、患者の生命予後を左右することは、ほとんどない医療行為だ。 「研修さえしっかりやれば、」「医師の指導の下であれば、」などという条件を付けたとしても同じである。

 ・・・ということで、気管挿管を看護師が行っても良いのなら、医師が行っている医療行為の 8 割くらいは、看護師に置き換えることができるのではないだろうか。そうすれば、医療費は人件費の面でかなりの節約ができるかもしれない。

 米国には麻酔看護師制度があるが、そもそもその存在自体が間違っていると思うのだが、麻酔を看護師にさせるのなら、医師のやっている医療行為の全てを看護師に解禁すれば、米国の医療費もかなり抑制できるかもしれない。

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