救急救命士挿管実習の同意を得るための極意

術前診察時に、救急救命士の挿管実習のための同意を取る際に、私が実際に行っている手順、気をつけている点を紹介する。

(1)歯牙動揺、挿管困難の可能性が高ければ最初から無理せず諦める。

術前診察時に、歯牙動揺があったり歯槽膿漏気味の場合、頚椎の可動制限や開口制限など、いわゆる挿管困難の可能性がある場合は、余計なトラブルを避けるために無理せず諦める。

(2)麻酔の説明は丁寧に!

麻酔についての説明は日頃よりも丁寧に行う。全身麻酔は「気管挿管」だけしたらそれで終わり、と思われないようにするためだ。

(3)先にお願いをする!「どちらでもいいですよ。」は絶対だめ!

麻酔の説明と同意など一連の術前診察、指示出しが終了したら、「これで麻酔についてのご説明は終了させていただきますが・・・・、○○さんにひとつお願いがあるんですが、よろしいでしょうか。」と切り出す。

患者さんは、麻酔科医にも「よろしくお願いします。」と言う機会を狙っているので、それよりも先にこちらから「お願い」をする。患者さんは、麻酔科医にお願いをしないといけない立場なので、先にお願いをされるとなかなか断われないものである。

(4)この病院だけではないこと。

「今、当院と大学病院(権威のある近隣の病院を引き合いに出す)で、救急救命士さんに病院実習をしてもらっています。」

(5)救急救命士は重症患者さんを相手にしなくてはならないこと。

「救急隊の隊長をされるような、しっかり救急の勉強された方なんですが、現場に行ってみたら、呼吸が止まりそうだったり、もう心臓が止まっていたというような重症の患者さんも当然居られる訳で、そういう患者さんに、先ほどお話しました気管挿管を行うと救命率が上がる場合があるんです。ただ、現場でいきなりと言うのは無理なので、当施設のような日常的に全身麻酔のある病院で、最低30例以上の実習を終えたら、現場でもやってもいいということになっているんです。」

手術を受けることになっている患者さんは、少なくとも「幸運だ。」とはけっして思っていない。むしろ、「なんで、私はこんな目に会うんだ!?」と嘆き不幸感に陥っていることがほとんどだ。それなのに、「救急救命士の練習台になって欲しい。」などと言われて、すんなり「いいですよ!」と言える患者さんはすご~く人間ができている。できすぎているくらいだ。

だから、せめて心肺停止状態で生命の危機に瀕している救急患者さんの例を出すことで、「手術で気管挿管されるのは、まだましなんだ。死にそうな人がそれで助かることもあるんだったら、いっちょ練習台になってやろうか。」という気持ちになってもらえたら、と思ってこんな話をしている。

(6)眠っている間にすること。

「眠られてからのことなんで、ご本人はまったく分からないことなんですが、気管挿管を救急救命士さんにやってもらっても良いでしょうか、というお願いなんです。」

(7)短時間で終わること。安全に配慮していること。患者さんを不安に陥れてはならない!

「30秒を2回だけなんです。トライさせていただけないでしょうか? それでうまく入らない場合には、私(麻酔科の医者が)がちゃんとやりますから。そばに付いて安全には十分配慮しながらやりますので、お願いします。」と頭を下げる。

これで、ほとんど(経験的には9割以上)の患者さんは了承してくれます。
中には、手術のことで頭がいっぱいで断る患者さんもいます。

(8)救急救命士に説明を機会を与える。

「じゃ、そこに救急救命士の○○が控えておりますので、ちょっと説明をさせてやってください。」と、救急救命士に患者さんを紹介する。

(9)救急救命士とともに患者さんに感謝する。

救急救命士からの説明が終わって同意の手続きが終わったら、「どうも、ご協力いただいてありがとうございます。」と、挿管実習にご協力いただくことに感謝する。

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