気管挿管がちょっと難しい時「プチ挿管困難」の処方箋

研修医や挿管実習の救急救命士、気管挿管の初心者にしばしば以下のような話をしている。

「そもそも神様は、口から覗いて声帯が見えるようには、人間の体を作ってくれてはいない。耳鼻科の先生なんて、への字に曲がった間接喉頭鏡というものを使って通常は声門を観察している。それなのに我々は、マッキントッシュ喉頭鏡を使って気管挿管するために口から直視下に声門を見ようとしている。土台無茶なことをしているんだ!」と。そして、

「教科書のイラストに記載されているように、喉頭蓋の下に声門の全体像が見えるような患者さんは2/3~3/4くらいじゃないかな。見えないからって必ずしも手技が悪いわけじゃなくて、患者さんが悪い場合も往々にしてあるから。」と。

気管挿管が難しいとき、なぜ難しいかを表現するのはけっこう難しい。なぜ難しいかは、症例ごとにその要因が微妙に異なるからだ。そして、その難しい要因を個別に点数化することなど、さらに難しい。ただ、中には、開口2横指とか、頚部後屈が不可能とか、下顎がすごく後退しているとか、特定の強い要因があって挿管が困難な症例もあるにはある。また上顎の乱杭歯が微妙な位置にあって、声門は直視できているのに、歯が邪魔になってチューブを声門に誘導できない場合など、スタイレットを使いさえすれば解決できる場合もある。

しかし、多くの場合は、複合要因である。「少し口が開きにくい」+「出っ歯」+「首が短い」とか・・・。そして、その要因の数が増えるに従って指数関数的に難易度が上昇する。

だが、逆にほんのちょっとした視野の改善が成功に導くこともしばしば経験する。小さいブレードに変えることで喉頭蓋の反転が少し改善して挿管できたとか、スニッフィング・ポジションにすることでとか・・・。

最近は、どの施設でも「挿管困難セット」とか「挿管困難カート」とかを準備していることと思うが、各部屋には置けるはずもない。それに、「もうちょっとで挿管できそうなんだが・・・」という「プチ挿管困難」状況では、「挿管困難カートを持ってきて!」と騒ぐほどのことでもない。そんな時、私がやっていた常套手段は、次の4点セットである。

【挿管が難しいときの4点セット】
(1)スタイレットを使う。
(2)10cm硬麻枕を入れて、スニッフィングにする。
(3)喉頭鏡のブレード・サイズを落とす。
(4)チューブ・サイズを落とす。
画像

複合要因を分析して最善の手段を講ずるのはその場になってからでは難しいので、とりあえずこの4つの、その場で可能な(ことが多い)複合対策を講ずるのである。「眼には眼を、歯には歯を!」よろしく「複合要因には複合対策」だ。

(1)→スタイレットを使用することで、喉頭蓋が視認できていれば、その直下にチューブ先端を沿わせて進めることで、半盲目的に声門を通過させることができる。
(2)→枕を高くすることで視野を改善できることが多い。
(3)→喉頭鏡のブレード・サイズを落とすことで、微妙に喉頭蓋の反転度を改善できることがある。また狭い視野に大きなブレードよりは小さいブレードの方が視野をほんの少しでも改善できる。挿管困難の患者の十中八九は顎が小さい。
(4)→チューブ・サイズを落とすのもブレード・サイズを落とすのと同様の理由からである。また、的(まと)の大きさは変わらなくても投げ入れる玉を小さくしたほうが入りやすいという理由もある。直径15cmの穴に、ソフトボールを入れるよりもテニスボールを入れるほうが簡単である。

意外に有効であると感じている。これでだめなら「挿管困難カート」の出番である。

この「4点セット」に加えるとすれば、「ガムエラスティック・ブジー」がお薦めである。価格が安くて各部屋にも常備できそうで有効率が高い。

あと、「トラキライト挿管」の手技は絶対に身に着けておいて損はない。たいていの挿管困難はトラキライトで対処できてしまう。

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