自力での「電子麻酔記録導入」の是非

 私は、越川先生が作られたフリーソフト「paperChart」を使用して、2009年に自分の勤務する病院に、病院の電子カルテシステムとインターフェースの取れた電子麻酔記録を成功裏に導入できた。しかし、その「成功」は、いわば「束の間」であった。その後、今日までの2年と半年の間に、「自分ではどうにもこうにも収集ができないのではないか!?」という事態に何度か遭遇したので、その事例をを紹介し、自力導入の是非について言及する。

 幸いにも、他の誰の助けも借りることなく、ひたすらインターネットで関連する情報を検索しまくって解決法を取得したり、なんとか困難を乗り越えることができた。しかし、その時のストレスたるや、今思い出しても、相当なものであったと記憶している。麻酔中に目の前の患者が、自分が対処法を習得していない状態に陥った状況と同じである。

 それは、私のPCに関する技量不足に起因するものであるかもしれない。しかし、周囲を 見渡しても「自分以上に、その事態を的確に処理できるの麻酔科医がいるだろうか?」と考えた時に、「もし、そうであれば、それはかなり幸運な病院だろう。」と思う。

 実際、私のPCの技量はそれほどのものではない。「素人」ではないが、SEに比べれば、「素人」に毛が生えた程度のものだと思っている。今後、自力で電子麻酔記録を導入しようと考えている麻酔科医の同志がいれば、その方たちへの、ある意味では「忠告」である。ある程度PCに造脂が深くても、麻酔科医自身が同時にSEとして電子麻酔記録システム半永久的に、独自に管理していくのはなかなか困難だと感じている。

 以下、私が経験した困難の事例を記しておく。

<その1>

 電子麻酔記録導入当初に、同時に導入した同じ形式のPCに全く同じソフトウェアをインストールして、同じように動作させていたにもかかわらず、特定の2台のPCにだけ、頻回にブルーバックの画面に英語でエラー表示さされるという、普通の人にとっては「致命的エラー」が発生した。同じハード同じソフトを使用しているのに、特定の2台のPCにだけ同じ症状が出て、実用上使用不可能な事態に陥った。

 使用していたOS Windows Vista が発売されておそらく2年近くは経過していた記憶しているのだが、これは、結局は、OS Windows Vista が内在するバグが原因であった。当時、最新のアップデートを施すことで、その症状は消失して、無事に稼働させ続けることができた。しかし、当時はまだ Upadate Pack には包含されておらず、自動的にアップデートされるようなものではなかったので、独自にアップデート・プログラムをダウンロード、インストールすることで治療することが可能であった。悩んだ期間は2週間程度であった。

<その2>
 あるPCが故障したために、同じ機種である予備PCを病院の無線LANに接続させようとIPアドレスを指定する際に、指定した直後は問題なく動作するのだが、再起動させると、またその設定を忘れてしまっていて、再起動する度に、IPアドレスを再度設定してやらなくてはならないという症状に遭遇した。

 これも、結局は Vista PC が内在するバグによるものであった。そのバグはWin7でも引き継がれているらしい。IPアドレスを指定する際に、変なキー操作をすると、設定データファイルに本来含まれてはいけないキーコードが記録されてしまい、設定したデータが再起動時にはうまく読み込まれないというバグであった。

 日本語で記述されているインターネットサイトには、これに関する情報は皆無であり、英語で記載されたサイトのQ&Aの情報を元に、設定ファイルを直接テキストエディタで書き換えることで、IPアドレス設定がきちんと記憶されて、再起動時にも再現されるようになった。


<その3>
 ある日、開心術の麻酔を担当している最中に、突然、薬剤の入力が不可能になった。薬剤リストを参照したいのに、輸液剤リストしか出てこないのである。なんと、同時に他の部屋でもすべての電子麻酔記録PCの薬剤入力ができないという事態に陥っていた。自分が担当している患者は、ちょうど人工心肺を離脱した直後という、麻酔科医にとってはもっとも気を遣う時間帯だったので、本当に「顔が青ざめた」のではないかと・・・。

 異常発生のタイミングは、他の部屋で、別の麻酔科医が、『登録薬剤に「低分子デキストラン」がなかったので登録した。』という時間に一致していた。そのタイミングと症状jから考えて、サーバーに登録されている薬剤情報参照ファイルに問題があるのではないかと考えて、調査してみたところ、なぜか、参照先ファイル名が「薬剤IO.txt」となるべきところが、「輸液剤IO.txt」に変更されてしまっていた。これは、おそらく「paperChart」のバグが原因ではないかと考えている。

<その4>
 以上のような特定の症状とは別に、PCに普遍的に起こりうる動作不良が不定期に起こり続けている。当院では現在3台のPCがハードディスクの起動エリアに障害が起こって入院中である。

 あるPCが正常に起動しない場合、それがOSのソフトウェア的な問題なのか、ハード的な問題なのかを判別するするのにもある程度の時間と労力を要する。ソフト的な障害であれば、OSを再インストールすれば症状は改善するであろうし、ハード的な問題があれば、同じ症状が続くであろう。そして、その場合には修理に出すしか解決手段ははないのが普通だろう。PCの強者ならば、自分でハードディスクの交換とOSの再インストールもやるんだろうけど、私にはそこまでの技量はない。

 動作不良の原因がOSであろうと、ハードであろうと、いずれにしても、あるPCを電子麻酔記録用PCに再度仕立て上げるのにもけっこうな時間と労力が必要である。

 以上のような、動作不良をきたした時のトラブルシューティングまで含めて考えると、麻酔科医が「電子麻酔記録システム」を自力で導入管理する(SEを兼任する)のはあまりおすすめしない。困難のハードルが高すぎる。

 地元の「呼べばすぐに跳んできてくれる」ソフトウェア業者に、

(1) 「paperChart」を使用した電子麻酔記録システムの構築
(2) 必要時にそのカスタマイズ
(3) 動作不良時の、ソフトとハードのトラブル・シューティングと代替機の提供
(4) 数台の予備機の準備と、誰でもできるPC交換の手順講習

を1千万円以下で導入、年間メンテナンス料金を数百万円程度で契約するのがもっとも現実的であると考えている。

もしも、今後、自力での「電子麻酔記録」導入を検討している方がおられるなら、けっして無理はせず、最初から地元のSEを交えて、上記のような契約条件を提示した上で検討を進めた方が、最終的には自分の首を締めなくてすむであろうことを記しておく。

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