自力での「電子麻酔記録導入」の是非 Part 2

 以前に、「自力での「電子麻酔記録導入」の是非」と題する記事を書きました。今回はその続きです。

今回の麻酔科学会学術集会に出席して、自力で「paperChart」を自院に導入した一人として、「paperChart」に関連したポスターセッションをこっそり覗きに行きました。そのセッションでは、「paperChart」に関連した2つの発表がありました。

[P1-58-5] 当院における麻酔記録システム フリーソフトpaperChartの導入 経緯と運用、問題点、今後の展望について
禰宜田 武士, 木村 信行, 杉浦 真沙代 (半田市立半田病院 麻酔科)

[P1-58-6] PaparChartの機能拡張性
小野 晃市, 成田 昌広, 川上 勝弘, 伊藤 真理子, 伊藤 伴子, 五十嵐 由希子 (長野市民病院 麻酔科)

https://member.anesth.or.jp/sm/59/session/P1-58.html

 いずれの発表も、その苦労をある程度知っている私からすれば、非常に参考になるすばらしい発表でした。演者の禰宜田 武士先生と小野 晃市先生は、自力での電子麻酔記録の導入ならびに今回の発表、本当にお疲れ様でした。

 しかし、座長たる内田 ○(大○大○ 大学院医学系研究科 麻酔・集中治療医学講座)先生のコメントはかなり手厳しいものでした。

内田先生:「もしも、君がいなくなったらそのシステムはどうなるんだね?」

演者;「あの、それは・・、上司もいちおう精通していますので。」

内田先生:「じゃ、その先生と君がいっしょにいなくなったらどうするの?」

演者;「・・・・・・」

内田先生:「ボランティアでやってちゃだめなんだよ、業務なんだから・・・。麻酔記録って言うのは、業務の一環なんだから、ちゃんとお金を出して、永続的にできるようにしなくっちゃ!」


 確かに内田先生が言われることには一理も二理もある。しかし、貧乏な市中病院で、電子麻酔記録導入の予算請求をして、実際に導入してもらえるようになるまで、いったい何年かかるだろうか。それをやることで、診療報酬が増えて、投資した額が相殺されるものであれば、導入される期待値も高いが、そもそも麻酔記録を電子化しても病院にとっては、大したメリットはないのですから。

 そのような苦境のなかで、昨今の電子カルテになんとか追随していこうと、電子麻酔記録を自力導入し、さらに拡張性を持たせようと頑張っている会員に対して、内田先生のお言葉は、非常に辛らつなものであり、傍らで聴いていて、はっきり言って腹が立つものでした。控えめな私は、遠くからそのやり取りを聴いているだけで何の発言もしなくて、御免なさい。

 都会の大きな病院でお金も潤沢にあり、高いポジションにいる先生には、病院を説得して○千万円の支出をさせることくらいは、いとも簡単なことかもしれない。しかし、多くの麻酔科医は、まだ若く病院内での大きな発言権はないし、病院自体も収支がきつきつでおいそれと麻酔記録ごときに大金を支出してくれるものではない。

 聴講していた会員の一人が発言された。

「まあ、そんな風に言わなくても、うまく機能しなくなったらそれはそれで、紙に戻せばいいじゃないですか!」


 同感です。

 ただ、永続的にシステムを維持していけるように、頑張って行こうではありませんか。

 ちなみに、私は、病院が支給してくれる研究費で、5台の Win7 ベースの予備機を購入、セットアップし、PCが動作不能になったら、すぐに置き換えができるように、「電子麻酔記録システム管理マニュアル」を作成しました。さらに、上司にも「電子麻酔記録用 PC」のセットアップ手順と置き換え手順をシミュレーションしてもらいました。

 貧乏な市中病院では、大きな病院のようにはいかない。大きな病院に勤めているポジションの高い先生方には、私のような貧乏な市中病院勤めの麻酔科医の立場は理解できないのだな~と、改めて思い知らされ、悲しい思いをしたセッションでした。

 発言内容の一言一句は正確なものではありません。私の記憶に残った形での再現でしかありませんので、すべてを信用はしないでください。悪しからず。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 2

ナイス ナイス

この記事へのコメント

Anesth_Earth
2012年06月17日 13:55
はじめまして。いつも楽しく拝見しています。某大学病院に勤める一麻酔科医です。電子麻酔記録は高いのを買っていただきましたが、カスタマイズ・メンテナンスはほとんど私一人でやっていますので、永続性という観点で見ると最悪の体制です。しかし、中途半端に人に任せるよりも全部やってしまったほうが効率的は効率的です。
 内*先生は、以前にも他の学会で同様のことをおっしゃっておいででした。私からは憎まれるのを承知で持論を展開されているとお見受けしました。麻酔関連のデータベース、電子麻酔記録はそれそのものが収益、患者安全に結びつかないために中々病院の理解を得られにくいシロモノです。しかし、集積されたデータを解析すれば間違いなく患者管理の最適化に寄与します(某学会で発表し、会場から好評を博しましたが学会記録の作成がまだ…T先生ごめんなさい)。それは別に難しいことでは無くて少しの工夫とアピール、それを継続的に続けていくことでエラい人からの理解もいずれ得られるのではないか、と私は楽観的に考えています。例えば、みんなが嫌がるインシデント事例の報告はできるだけ世間一般の発生率と当院の発生率を併記して病院に報告しています。電子麻酔記録や電子カルテから抽出されたデータであることも含めて。内*先生は第一人者、パイオニアであられるからこそ、その苦労、鬱屈も大きいのでしょう。私は、経験10年ちょっとの若輩者ですから、まだまだ知識が少ないからこそ楽観的でいられるのでしょうが、それがまぁ特権かなと思っています。そのようなご発表は初心者には敷居が高いものです。これに懲りずにまたこれからも発表されればよいですね。そのときは是非私も参加させていただきたいものです。今回はあいにく不参加でしたが。

この記事へのトラックバック