Q:輸液剤(晶質液)の行方は?

A:通常、全身麻酔を行う場合、麻酔導入のために静脈ライン確保を行い、そのラインから麻酔導入剤を投与する。その際、輸液剤は細胞外液型輸液剤を使用しているだろう。なぜなら、手術に際して主として失われるのは、細胞内液ではなくて、細胞外液だから。しかし、必ずしも細胞外液型輸液剤である必要はなく、輸液剤の種類は問わない。

出血というのは、血液の喪失だから、実は細胞内液(血球成分)と細胞外液の双方の同時喪失なのだが、すぐには血球成分の補充は行わず、出血量が少ない場合、もっぱら喪失分は、細胞外液型輸液剤を用いて補充する。

この細胞外液型輸液剤(乳酸リンゲル液や酢酸リンゲル液)は、静脈内に投与された後、どうなるのであろうか?

日常的に麻酔導入を行っていると、血管内に投与したプロポフォールによって、2 分以内に患者は意識消失し、ロクロニウムによって筋弛緩が得られることを実体験として知っているであろう。

これらの薬物がいつまでも血管内に留まっていたのでは、効果部位に到達できず、その作用を発揮できないであろうことは容易に想像できる。これらの薬物は、血液が全身を 1~2 循環する間に、血管外に拡散して効果部位(プロポフォールの場合は脳神経系、ロクロニウムの場合は神経筋接合部)に到達して、その薬理作用を発揮している。

プロポフォールの分子量が 178、ロクロニウムの分子量が 610 であるのに対して、通常の細胞外液型輸液剤の構成成分は、これら薬物の分子量よりもずっと小さい分子ばかりで構成されている。ということは、やはり、これら輸液剤は、血液が全身を 1~2 循環する間に、プロポフォールやロクロニウムと同様かそれよりも早く血管外に拡散して細胞外液相全体へと拡散していくと考えるのが妥当だ。

通常の晶質液と呼ばれる輸液剤は、見た目は血管内に投与しているが、その実、その多くは、数分以内に血管外に逸脱して、細胞外液相全体に拡散してゆく。細胞外液のうち、その約 1/4 は血管内に存在して「血管内液」と呼ばれ、それ以外の 3/4 は「組織間液」と呼ばれている。

投与した、細胞外液型輸液剤は、数分以内に血管内と組織間液とに 1:3 の比率で分配されてしまう。つまり、通常の晶質液は、血管に投与しているが、細胞外液相に投与していると考えた方がよいのである。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック