Q:気道確保後の咽喉頭痛を少なくするには?

A:術後の喉頭痛:系統的レビューによると、
・術後の喉頭痛の発生頻度の報告は、全身麻酔後の最大 62% にも上る。
・性別が女性、年齢が若い、肺疾患の既往、麻酔時間の延長、抜管時の気管チューブに血液汚染の存在が最大のリスクと関連している。
としている。

そもそも、脊椎麻酔や、硬膜外麻酔単独では、咽喉頭痛など発生するはずがない。当たり前のことだが、全身麻酔に際しては、気道確保のために、エアウェイや声門上気道器具、そして気管チューブを使用するために、その処置の合併症として咽喉頭痛が発症するわけである。

したがって、術後の咽喉頭痛を少なくするためには、可及的に口腔内に何も入れないことが一番の対策である。末梢神経ブロックなり、硬膜外麻酔なりの区域麻酔をしっかり効かせておくことで、四肢手術の多くの症例では、声門上気道器具や気管チューブは不要である。

一般的な気道確保の方法として、気管チューブによる挿管と、ラリンジアルマスクに代表される声門上気道器具では、嗄声や咳嗽といった声門以下の症状は、当然のことながら、気管チューブの方が多いであろう。また、声門上気道器具が直接・間接喉頭鏡を使用しないことや、挿入時に患者に加える力の大きさを考えると、気管挿管(気管チューブ)の方が圧倒的に術後の咽喉頭痛の頻度が高いであろうと予想される。

ところが、「ラリンジアルマスクと気管挿管の比較:気道合併症の系統的レビュー」では、
・ラリンジアルマスク(LMA)と気管チューブ留置後の術後気道合併症には明確な差はない。
・LMA Supreme は、気道合併症の発生率が最も低いことに関連している。
・異質性がデータのプールを制限しており、LMA の利点を客観化するためには、今後の試験が必要である。
としている。ラリンジアルマスクの方が低侵襲であることは自明のようでありながら、いまだエビデンスにはなりきれていないようである。

気管チューブを使用した場合に嗄声が起こる原因のほとんどは、気管チューブが直接に声帯を圧迫したために起こる、声帯の一時的な変形・血流障害に伴う浮腫などであろう。また、咳嗽については、気管チューブの先端やカフ、カフに塗布したゼリー、気管内に噴霧したスプレー、さらには、抜管前の吸引カテーテルによる気管粘膜の微小な損傷が咳嗽を誘発する原因となっているのであろう。

では、気管挿管後の咽喉頭痛の原因は何であろうか。
#1.気管挿管時に使用した直接喉頭鏡なりビデオ喉頭鏡によって声門上気道に加えらた機械的刺激が、咽頭の粘膜を損傷する可能性がある。
#2.気管チューブを挿入する際に、気管チューブ自体で、声門上~声門~声門下の粘膜を傷つけてしまう可能性がある。また、一定の太さのチューブが生体ひだを圧迫し続けることも問題である。
#3.気管チューブのカフを膨張させたときに、カフが気管粘膜を圧迫することによって、局所の血流が障害され、抜管後の再灌流による発赤、浮腫といった気管粘膜の炎症をきたす可能性がある。
#4.カフに塗布したゼリーや、咽喉頭に直接噴霧したスプレーなどが、保護的に作用する場合もあれば、局所の炎症や疼痛を惹起する可能性もある。
#5.気管チューブ内にスタイレットをセットして使用した場合には、気管挿管時にスタイレットを引き抜く必要があり、その際に、気管チューブが一時的にしろ強い変形をきたして、声門~声門上気道の粘膜を気管チューブ外壁が強く擦過して損傷する可能性がある。

#1、#2 ⇒ 愛護的な喉頭展開と気管チューブ挿入がその対策と言うことになろうが、喉頭展開時に、直接喉頭鏡よりは、ビデオ喉頭鏡の方が無理な開口、頚部後屈、喉頭展開が必要ないことから、利用できるのであれば、ビデオ喉頭鏡の使用が望ましいであろう。また、麻酔は短期管理であるので、細めのチューブを使用することも重要である。

#3 ⇒ 挿管後や頭頸部の体位取の後に、必ずカフ圧を測定して適正圧に調節し、過少圧、過剰圧を避けることが重要である。

#4 ⇒ 高濃度のリドカインスプレーは、咽喉頭への直接噴霧により術後咽頭痛の発生率と重症度が有意に高くなるという報告があり避けるべきである。
リドカインスプレーの喉頭気管内適用は、完全静脈麻酔後の術後咽頭痛の発生率を増加させる
また、カフに塗布する潤滑剤については、K-Y ゼリー、ベンジダミン塩酸塩ゲルや、ベタメタゾンゲルの使用が、リドカインゼリーよりも術後咽頭痛の発生率と重症度が少なかったと報告されていることから、日本では、K-Yゼリーの使用が推奨される
気管内麻酔後のリドカインと K-Y ゼリーの喉頭痛、咳、嗄声に及ぼす影響
術後咽頭痛に及ぼすベンジダミン塩酸塩ゲル、リドカインゲル、リドカインスプレー塗布の効果
術後の咽頭痛、咳、嗄声を減らすのに、気管チューブに塗布したベタメタゾンゲルとリドカインゼリーの比較
気管チューブカフの潤滑が術後咽頭痛および嗄声に及ぼす影響
気管チューブ関連術後気道症状の軽減にリドカインゼリーとベタメタゾンゲルを無作為比較

#5 ⇒ 気管挿管時のスタイレット使用が麻酔患者の術後咽頭痛に及ぼす影響を検討した無作為化比較試験では、
・術後咽頭痛の発生率は、スタイレット群(10/20 例)の方が対照群(2/20 例)より有意に高かった。
としており、スタイレットの使用自体が術後咽頭痛の発生原因となっていることが示されている、さらに
気管挿管スタイレット除去時の引き抜く力と術後咽頭痛との相関関係を検討した結果から、
・気管挿管後の喉頭痛は、スタイレット抜去時の引き抜く力の増加と関連していた。
・特に、スタイレット抜去時の引き抜く力>10.3 N は、術後喉頭痛と相関していた。
としている。
スタイレット抜去時の引き抜く力が、潤滑剤の種類によってどう変化するかを検討した報告「気管チューブからのスタイレットの除去:潤滑剤の効果」では、
・スタイレットを、滅菌水、シリコーン液、リドカインスプレー、リドカインゲル、MedPro(TM)潤滑ゲル、Lacri-Lube(TM)で潤滑して気管チューブに装填し、経時的に潤滑剤なしの場合と比較したところ、0 時では、潤滑群の方が良好で、シリコーン液は塗布 24 時間まで性能が一貫して良好で、潤滑剤の最良の選択肢であった。
としており、スタイレット抜去時の引き抜く力を少なくするためには、シリコン液がもっとも推奨されることが示されている。

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