Q:CSHT(context sensitive half-time)とは?

A:CSHT(context sensitive half-time、前後状況感受性半減期)とは、ある薬剤を一定速度で持続投与して中止した後、血中濃度が 50% に低下するまでの時間(分)を示すものである。もっと分かりやすい日本語にするとすれば、「持続投与時間依存性半減期」とでも表現できるだろう。

基本的な薬理学講義において、「排泄半減期」の概念、つまり薬物濃度が初期濃度の半分の濃度になるまでの時間を習う。より高度な多分画モデルでは、体のコンパートメント内の分布、代謝、排泄の相互作用によって、同様の半分の濃度に達するのに要する時間を context sensitive half-time の概念がより正確に説明している。

context sensitive half-time は、薬物注入の持続時間が見かけの半減期に及ぼす関係を表している。我々が最初に薬剤注入を開始するとき(例えばプロポフォールの注入を開始するとしよう)、血漿と組織の濃度は両方ともゼロである。投与を開始すると、プロポフォールの血漿濃度が上昇し、続いて組織における濃度が上昇していく。一部は肝臓によって迅速に代謝され始める。高濃度の血漿プロポフォールは、続いて、濃度勾配にしたがって血管に富む臓器、脂肪組織などに移行していく。

プロポフォール注入が停止されると、血漿濃度が低下し始める。これによって末梢組織から血漿への移動が促される。静脈内投与を中止してもプロポフォールはその効果を発揮し続ける。

同時に進行する代謝、分布、排泄を組み合わせると、薬物動態に影響を及ぼす多くの要因があることが分かる。context sensitive half-time は、こういった多くの要因の累積的な影響を反映している。
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3 分画薬物動態モデルを水圧モデルで近似。高さ hi(t)は、各分画の水位(薬物濃度)を表す。各バケツは円柱領域 CAi によって特徴付けられ、バケツ同士または外部に接続するパイプは、コンダクタンス Gi によって特徴付けられる。水は速度 r(t)でバケツ1に入り、G1を通って不可逆的に漏れる。(Hughes MA, Glass PS, Jacobs JR: Context-sensitive half-time in multicompartment pharmacokinetic models for intravenous anesthetic drugs. Anesthesiology 76:334–341, 1992.から引用)

ある薬剤を一定速度で持続投与した時間をグラフの横軸に、持続投与時間に対応した context sensitive half-time をグラフの縦軸にプロットすると、薬剤毎に独自の曲線を描くことができる。

context sensitive half-time は、ある薬剤を長時間持続投与した際に、その投与持続時間に応じて、中止後にその薬物の効果がどれくらい持続するのかを判断するための指標となる。

持続投与時間が長くなるに従って半減期が長くなる薬物は、持続静脈内投与には適さない薬物であることを示しており、逆に、半減期があまり上昇しない薬物は持続静脈内投与に適していることが示されている。

ジアゼパムやチオペンタール、フェンタニルといった脂溶性の薬剤は、持続投与時間が長くなるにつれて、半減期が急速に延長していくため、持続投与には適しておらず、一方、プロポフォールやレミフェンタニル、ケタミン、エトミデートは、長時間持続投与を行っても半減期があまり延長しないことから、持続投与に適していることが窺われる。静脈麻酔を行うに当たっては理解しておかないといけない概念のひとつである。
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