Q:揮発麻酔薬とオピオイドの相互作用とは?

A:揮発麻酔薬にオピオイドを併用すると、MAC や MAC-BAR、MAC-awake が減少する。ここで、
MAC=minimum alveolar concentration、最小肺胞濃度:皮膚切開に対して 50% のヒトが体動を示さない肺胞濃度
MAC-BAR=minimum alveolar concentration blocking adrenargic response:皮膚切開に対して 50% のヒトが交感神経反応を示さない肺胞濃度(血圧と心拍数がベースラインから 15% 以上変化した場合を反応あり)
MAC-awake:50% のヒトが口頭での簡単な命令に応答できる肺胞濃度

しかし、これらのうち、MAC と MAC-BAR はオピオイドの併用により指数関数的に減少し、高濃度のオピオイドでは天井効果(ceiling effect)が認められるのに対して、MAC-awake の減少は直線的である点に注意するべきである。

例えば、以下のグラフは。セボフルランとフェンタニルとの相互作用を示したものであるが、フェンタニルの有効鎮痛濃度である 1~2ng/ml を併用するだけで、セボフルランの MAC-BAR は 4⇒2~1% へ、MAC は 1.7⇒1~0.8 へ、MAC-awake は 0.64⇒0.55~0.5 へと減少する。
画像

オピオイド濃度が比較的低い場合には、MAC-BAR>MAC>MAC-awake が明らかである。つまり、皮膚切開に対して体動や交感神経反応が認められなければ、ほぼ 100% 簡単な命令には反応がない。
「執刀して体動がないし、血圧も心拍数も上がらないんだから、意識があるわけない」と言えた。

ところが、オピオイド濃度が高い場合には、MAC-BAR と MAC が、MAC-awake が非常に近いために、皮膚切開に対して体動や交感神経反応が認められなくても、簡単な命令には反応できることがある。
「執刀しても体動がないし、血圧も心拍数も上がらないからといって、意識がないとは言えない」ことがある。

高濃度のオピオイドを併用している場合には、体動や交感神経反応がないからと言って、揮発麻酔薬の濃度をどんどんと低下させて行くと、術中覚醒の危険性がどんどん高まっていくことになる。

術中覚醒の危険性を回避するためには、揮発麻酔薬の維持濃度は MAC-awake の 2 倍程度、つまり、0.6~0.8 MAC とするべきである。具体的には、セボフルランでは 1~1.4% 程度を維持するべきである。しかし、これはあくまでも 50 歳前後の患者での値であって、高齢者では、これよりも低濃度で維持することが可能である(年齢による補正については、Q:揮発麻酔薬の維持濃度はどうするか?)を参照。

MAC-BAR や MAC-awake の概念は、MAC から派生してきた 50% 有効肺胞濃度であるが、刺激の仕方や、刺激に対してどういった反応を観察しているかによって、本質的な意味が異なっている。

侵害刺激に対する体動と言う反応(MAC の場合)は、主に脳幹部以下の脊髄が担っており、脳死動物でも認められることが分かっている。また、簡単な従命に対する反応(MAC-awake の場合)は、明らかに大脳皮質の機能を見ている。また、MAC-BAR は、脊髄以下の交感神経系とそれに対する心血管系の反応性の総体を見ていることになる。

もしも、鎮痛効力が鎮静作用と同程度に非常に強い揮発麻酔薬が開発されれば、意識消失(大脳皮質の抑制)と同時に、侵害刺激に対する反応=脊髄機能(体動と交感神経反応)も同時に消失することになろう。その揮発麻酔薬の場合は、MAC≒MAC-BAR≒MAC-awake ということになるのだろう。

理想的な揮発麻酔薬:MAC≒MAC-BAR≒MAC-awake

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