梨状窩局在化補助盲目的挿管:喉頭鏡挿管との比較

・従来の気管挿管では、声門を直接見るために喉頭鏡検査が必要である。しかしながら、喉頭鏡検査は多くの潜在的な合併症と関連している。本研究の目的は、従来の喉頭鏡下気管挿管の場合と梨状窩局在化補助盲目的経口気管挿管の有効性および安全性を比較することであった。

・様々な手術を受けた 300 人の患者を対象とした無作為化患者式前向き研究を実施した。100 人の患者を喉頭鏡挿管群(喉頭鏡群)に割り当て、200 人の患者を盲目的挿管群(盲目群)に割り当てた。

・盲目群における総挿管成功率は、喉頭鏡群の場合と同様であった(それぞれ 100% vs 99%; p=0.33)。両群におけるパルスオキシメトリーによる酸素飽和度は 98% 超に維持された。挿管時間は喉頭鏡群よりも盲目群の方が有意に短かった(それぞれ 9.7±3.4 秒 vs 23.0±5.8 秒、p <0.001)。術後合併症発生率は喉頭鏡群よりも盲目群の方が有意に低かった。これらの症状からの回復時間は、喉頭鏡群よりも盲目群の方が有意に短かった(p=0.004)。

・成功率、挿管時間、術後合併症発生率の観点から、梨状窩局在化補助盲目的気管挿管の方が、従来型喉頭鏡下経口気管挿管よりも効果的であることが示された。さらに、よく見られるリスク要因による影響が少ない。したがって、この方法は困難気道を有する患者にもっと有益な可能性がある。

【 実際の挿管手順 】
1) 気管チューブの形状:通常のスタイレットを入れた気管内チューブの近位端を「J」字形に 90~135°の角度に曲げた。チューブ近位端の長さは、患者の甲状頤間距離に等しくした。チューブの屈曲度は、甲状頤線と喉頭軸との間の角度にほぼ等しかった。
2) 体位:術者は患者の頭側に立った。患者は枕なしで頭をわずかに伸展した状態で仰臥位に置くか、または患者の下顎角を上方に押して開口したままにした。
3) 挿管:
① 「J」字型の気管内チューブを、舌の後面に沿って正中線から口腔内に挿入する。チューブ近位端が咽頭後壁に達すると、10~15 度の角度で側方に振る。
② チューブをゆっくりと前進させると抵抗があるが、これは同側の梨状窩に到達したことを示す。
③ チューブを 5~8 mm 引き戻した後、チューブの近位端を正中線側に振り戻し、スタイレットを引き抜きながらゆっくりと前進させる。抵抗なくチューブが進めば、チューブが気管にうまく入ったことを示す。
画像

4) チューブ固定:気管チューブを麻酔器に接続し、聴診と呼気終末二酸化炭素分圧の確認によって正しい位置を確認後、従来法を使用してを固定した。

[!]:これは、トラキライト(光ガイド付きスタイレット)と同様の挿管法であるが、光を頼りにせずに、チューブ先端を梨状窩に意図的に入れて、皮膚表面の軽度の膨隆からチューブの先端位置を推定して、盲目的に挿管する方法。現行のあくまで視認することに固執する(直接がだめなら間接的にビデオで)方法とは全く逆行しているが素晴らしい。中国雑技団の曲芸のようだ。口腔内に入れるのは、スタイレットの入った気管チューブだけ。必要なのは、スタイレットと技術のみ。これ以上にシンプルな挿管法はないな。よ~し、練習するぞ! トラキライト挿管はマスターできているので、20~30 回くらい練習すればできるようになるかな~!?

盲目的挿管の動画 ← 「中国雑技団の曲芸のよう・・・」

【出典】
Pyriform Sinus Localization-Assisted Blind Intubation: Comparison with Laryngoscopic Intubation
Med Sci Monit. 2014; 20: 1720?1727.

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この記事へのコメント

偽麻酔医屋
2019年04月08日 12:14
こんな手技、正直驚きました。
救急なんかではどうなんでしょうか?
筋弛緩していることがやっぱり前提でしょうか?
通常の喉頭鏡での手技にも、応用できそうに思いました。
ちなみに私はトラキライトは懐疑的で使わなかったのでした。
SRHAD-KNIGHT
2019年04月08日 12:43
偽麻酔医屋さま、コメントありがとうございます。
> 救急なんかではどうなんでしょうか?
海外の救急隊員(EMT)向けには、喉頭鏡を使わずに指操作だけで挿管する方法=digital intubation (左手の示指と中指を口腔内に入れて、喉頭蓋を指先で触れて、喉頭入口部に気管チューブやブジーを誘導して挿管する方法) が blind intubation の一方法としてよく紹介されています。が、この論文で紹介されている方法は、一般化していないようです。
>筋弛緩していることがやっぱり前提でしょうか?
緊急避難的には、筋弛緩が効いてなくてもよいでしょう。その場合には、「咳込み」で気管に入ったことが確認できるでしょうね。でも、通常は筋弛緩しておいた方が、術後咽喉頭痛とか、嗄声は少なくなるでしょうから、日常的な手技として行う場合には、筋弛緩が前提と思います。
>私はトラキライトは懐疑的で使わなかったのでした。
私は、トラキライトの絶賛派です。2cm しか開口できなくても挿管できる可能性があります。トラキライトが製造中止になってしまったことが残念でなりません。習得しておいて損のない方法と思います。トラキライトがなくても、スタイレットだけで盲目的挿管する本法をぜひ身に着けたいと思います。
偽麻酔医屋
2019年04月09日 01:02
先生ありがとうございます。

これこそが麻酔科医の持つべき技術だったりして…
実際に試してみたいとも思っています。

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